2013 Fiscal Year Research-status Report
脳活動の近赤外分光計測データに対する経路長を考慮した実時間解析法の研究
Project/Area Number |
25420385
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
安達 雅春 東京電機大学, 工学部, 教授 (20312035)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | NIRS / 脳機能計測 / 因果律 / 非線形時系列解析 |
Research Abstract |
本申請研究課題では、近赤外分光装置(NIRS)により測定した脳活動データの高速識別手法の確立とリハビリテーションの補助のためのNIRSデータの解析結果表示システムの構築を行う。 平成25年度は、まず、本申請研究課題全体の基礎の確立として、手の実運動およびその想像時におけるNIRSデータについて、皮膚血流の影響の検出を行った。 具体的には、手の掌握運動に関する運動課題遂行時における脳活動をNIRS装置によって計測を行った。この際、従来の3cm間隔で配置したプローブに加え、1.5cm間隔に配置したNIRSプローブを用いた計測を行った。この1.5cm間隔に配置したNIRSプローブと3cm間隔のプローブによって検出した成分との間にグレンジャー因果律に基づく解析を実行した。その結果、従来は認知課題では他の課題に比べて皮膚血流の影響が大きいとされていたが、本研究では、運動課題においても皮膚血流の影響が強い可能性が示唆された。 次に、上記とは異なる因果律解析法として、移動エントロピーを用いて閉眼安静時の脳活動のNIRSデータの解析を行った。このデータにおいても、上述の1.5cm間隔に配置したNIRSプローブと3cm間隔のプローブによって検出した成分との間に非対称的な情報量の移動が検出できた。このことは、皮膚血流から皮質血流への因果律の検出できることを示唆している。 さらに、NIRSデータに基づく脳の領野間の機能的結合の検出を試みた。その際、非線形時系列解析手法の一種であるジョイント・リカレンス・プロットを導入し、手の掌握運動およびその想像課題実行時のNIRSデータの解析を行った。その結果、特に手の掌握運動の想像時には、左右両半球の運動前野と補足運動野の間で、強い機能的結合の存在を示唆する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的のうち、近赤外分光装置(NIRS)により測定した脳活動データに対する因果律に基づくデータ解析については、グレンジャー因果律および移動エントロピーという異なる二種類の手法を適用し、皮膚血流から皮質血流への因果律の検出に成功したため、当初の計画以上に進展している。 さらに、当初計画では次年度に実施する予定の機能的結合のためのデータ解析にも着手しているため、NIRSデータの解析の面では、当初の計画以上に進展している。 しかし、NIRSデータに対するタスク・レスト識別については、具体的な成果が得られていないため、全体としての達成度は、おおむね順調に進展しているというレベルにとどまる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の成果で得られた皮質血流の影響を除去する前処理後のNIRSデータについて、タスク時とレスト時の識別を行う識別器の非線形サポートベクターマシンの学習による構築に早急に実行する。 次に、学習後のサポートベクターマシンの出力層にカオスニューロンを導入することにより、未知データに対する非線形ダイナミクスを利用した高速な識別器を構成する。 さらに、手の実運動時と運動想像時における脳活動のNIRS計測信号を再現するモデルの構築を行う。またこれと平行して、手の実運動時と運動想像時における脳活動領野間の有効的結合モデルの構築を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
被験者を公募したが、計画した人数を集めることができず、被験者謝金が当初計画を下回ってしまった。また、学会発表の旅費については計画当初で予定していた学会とは異なる学会で発表を行ったため、使用に至らなかった。 次年度には、被験者公募の期間および回数を増加させ、十分な人数の被験者を確保し、十分な回数の実験を実施する。また、国内外の学会への積極的な参加と論文投稿を行う予定である。さらに、測定環境の向上とデータ解析の効率化のためのソフトウェア等の導入を進める。
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Research Products
(3 results)