2014 Fiscal Year Research-status Report
月探査衛星かぐやで取得した多種データの統合解析による月面誘電率の周波数特性の推定
Project/Area Number |
25420402
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
後藤 由貴 金沢大学, 電子情報学系, 准教授 (30361976)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠原 禎也 金沢大学, 総合メディア基盤センター, 教授 (50243051)
熊本 篤志 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00302076)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 惑星探査 / かぐや衛星 / 自然電波 / 月面誘電率 / オーロラキロメトリック放射 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、1.自然電波を利用した月面の誘電率推定法の開発、2.衛星からのレーダー計測による月面誘電率のマップ作成の2つの課題を解決することで、月面誘電率の周波数特性を推定することを目的としている。 課題1は、月探査衛星かぐやで観測された地球起源のオーロラキロメトリック放射(AKR)と呼ばれる自然電波の月面における反射率を求めることにより、数100 kHz 以下の低周波に対する月面の誘電率を推定する一種の逆問題である。平成26年度は、これまで検討してきたAKRの観測スペクトルに現れる干渉縞から求めた低周波の誘電率が、レーダー計測で得られた高周波に対する誘電率との比較において十分な精度が得られなかったことから、追加の情報として反射による偏波の変化を取り入れることにより精度向上を試みた。また、これまでに開発した月面反射率(誘電率)推定手法およびオーロラキロメトリック放射の偏波特性について研究成果をまとめ、札幌で開催されたアジア・オセアニア地球科学会(AOGS)と中国の北京で開催された国際電波科学連合総会(URSI)にてそれぞれ発表を行った。 課題2のレーダー計測と地形撮像に基づく高周波に対する誘電率の推定に関しては、月の全球をカバーする推定処理が完了し、海と高地においてそれぞれ典型的な値の分布が得られた。月面上の特定の領域において誘電率が顕著に増加する傾向が見られ、月科学における新たな知見の獲得にもつながっている。これらの成果は、日本惑星科学会や米国で開催された月・惑星科学会議(LPSC)において発表されている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題1の逆問題解法の開発、課題2の計測データの解析とも当初の計画通り進んでいることから、おおむね順調に進展していると言える。ただし、課題1の開発要素である低周波に対する月面反射率の推定において、当初から検討してきたスペクトログラム上の干渉縞だけを用いる方法では精度が十分ではないことが分かり、独立な情報として自然電波の月面反射による偏波の変化を取り入れることにより精度向上を試みている。すでに、反射が衛星で観測される電界の偏波にどのような影響を及ぼすかを調べるソフトウェアを完成させ、月面誘電率に対する偏波の変化の詳細調査が行われている。課題2について、高周波(HF帯)に対する誘電率の月面全球マップが完成し、さらに誘電率が特異な値を示す領域について詳細解析が進められている。研究成果は、課題それぞれについて国内外の学会で公表されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は前年度に引き続き、自然電波から月面の低周波の誘電率を推定するための逆問題解法の開発に取り組む。誘電率は月面の反射率から算出されるが、この反射率は波の振幅と位相の反射前後の変化により定義される。前年度までは衛星への直接波と月面反射波との干渉に起因するスペクトル上の縞構造すなわち振幅成分にのみに着目してきたが、偏波率の変動として観測される位相変化を合わせて利用することを検討する。これには複数の拘束条件に対する逆問題解法を取り扱う必要があるが、過去の研究で取り組んできた同種の問題に対するノウハウを応用できると考えている。また、個々の開発要素を研究室の大学院生の研究課題として振り分けることにより効率的に作業を進めていく。
|
Causes of Carryover |
平成26年度に予定していた研究補助の謝金業務を平成27年度に実施するよう変更したため、次年度への繰り越しが生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品の購入、成果発表のための旅費、研究補助の謝金業務、研究成果投稿費に使用する予定である。
|
Research Products
(11 results)