2014 Fiscal Year Research-status Report
確率動力学にもとづくネットワーク上の人間-情報系のモデル化と制御
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25420431
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
早川 朋久 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (30432008)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 情報の非対称性 / オークションアルゴリズム / ゲーム理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
人間の意志決定を含めた人間-情報系のネットワーク理論では,情報の非対称性から生じる特性を考慮し,各エージェントはそのような前提の下で自分自身の行動戦略を決定する枠組みが必要となる.人間-情報系における情報交換は,各エージェント間の情報の非対称性を軽減させる方向に働く方向に為されると仮定して,26年度は動的版ブライスのパラドクスを考慮した環境制御とゴシップによる情報拡散モデルの導出を行った.
動的版ブライスのパラドクスを考慮した環境制御:25年度に整理した理論を用いて,パラドクスを起こさないための環境(ネットワーク)変化の指標を検討した.具体的問題として,都市部での信号制御ネットワークを想定し,運転者は目的地への利己的戦略的経路選択を行う仮定の下での,ネットワーク全体の交通流量を最大化するための信号ネットワーク制御則を構成した.この際,各主体の行動はマルコフモデルでは表現できないことを確認し,マクロ経済学の動学的確率的均衡理論との類似性を考慮している.
ゴシップによる情報拡散モデルの導出:人間のネットワークにおける口コミ情報のように,各主体が互いに確率的に遭遇したときに持っている情報を伝達・交換する状況(ゴシッピング)が考えられる.ゴシッピングの最もプリミティブな問題設定が通信工学における一方向のゴシッププロトコルであり,比較的低い情報交換頻度でも確率的に通信をすることによって情報の拡散性を高める特性を利用していると考えられるが,情報発信者が複数存在するような双方向の情報伝達を考え,異なる情報伝達行為の干渉がどのようにネットワーク全体に対する情報拡散に影響を与えるかを考察した.簡単のために26年度は有界なネットワークを対象とした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動的版ブライスのパラドクスを考慮した環境制御では,各主体が自分自身の評価関数を高めるように利己的に振る舞うとき,ネットワークの統治者はどのような施策をとればよいかを議論することになるが,現実には各主体は将来のネットワーク環境の予想も立てながら現在の行動を決めているはずである.この点を考慮して,フィードフォワード等の要素を含めた新たなモデルの構築が完了している.
ゴシップによる情報拡散モデルの導出では,有界なネットワークについて臨界確率を導出したが,27年度に行う無限に広いネットワークへの適用への足がかりとなった.特に,情報伝達特性の評価にパーコレーション理論を用い,無限に広いネットワーク上での複数のゴシップ行為に対する情報拡散の臨界確率の関係式を導出する目処が立った.
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は,チープトークにおける情報の非対称性解消のための戦略の特徴付けと,サーチ理論のモデル化をする.また,最後に研究の総括を行う.
チープトークにおける情報の非対称性解消のための戦略の特徴付けでは,情報開示ゲームでは,当初存在していた情報の非対称性は情報伝達という行為そのものによって解消されることがわかっているので,一般のチープトークに対して25年度の研究でで得られた知見に基づいて,コミュニケーションが情報の非対称性を解消させる原理を,マルチエージェントシステムにおけるコンセンサス問題との類似性に着目して,ある状態量がネットワーク全体である同一の値・記号へと収束していくプロセスとして解明する.
サーチ理論のモデル化では,サーチ理論が長期的な財の余剰や不足を巧みにモデルに取り入れている点に着目し,2つのクラス(層)からなる主体間の遭遇を確率過程として書き下すことで,サーチ理論におけるミスマッチの動的数理モデルを構築する.
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