2013 Fiscal Year Research-status Report
安定化・ロバスト化を実現する多入出力データ駆動型制御―FRITアプローチ
Project/Area Number |
25420432
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
金子 修 金沢大学, 電子情報学系, 准教授 (00314394)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | データ駆動 / FRIT / 閉ループ感度 / 多入出力系 / チューニング / 感度関数 |
Research Abstract |
平成25年度は,データ駆動型制御器チューニング法であるFRITの多入出力系への拡張,および,FRITで得られる制御系のロバスト性に関して,いくつかの実績を得た. まず,多入出力系への拡張に関しては,1入出力系のときと同様な評価関数を誘導し,その評価関数を最小化することが,なぜ(目標値応答問題に限定しているが)所望の性能を達成することにつながるかということを考察した.そしてシミュレーションによりその有効性を検証した. ロバスト性については,外乱除去問題に対応する制御器チューニング手法の提案,および得られる閉ループ系の感度や一巡伝達関数などループ特性の立場から,いくつかの考察を行った.前者については外乱オブザーバの考えを導入することで,あるクラスの未知外乱を除去するようなFRITベースの制御器パラメータチューニングの方法を考察した.後者についても,FRITによる制御器チューニングが一巡伝達関数(これは安定余裕などロバスト性に深く関連している)をどのように整形するかを考察した.またループ特性についてはVRFTとの比較も行った. そのほか,関連成果として,状態空間法に基づく制御器(オブザーバベースド制御器)についてもFRITの拡張を行い,伝達関数ベースの場合と同様に,FRITの評価関数を最小化することが目標値応答追従性の向上に関連することを示した.この結果は現時点では1入出力系に対してのみ得られているが,状態空間法は多入出力系の制御と親和性があるため,この結果は多入出力系への拡張の有用なアプローチの基礎となることが期待できる.また,あるクラスの非線形系や時変系の対象に対して,FRITの拡張を部分的に行った.これらの成果は,対象が線形時不変でない場合に線形時不変な目標応答伝達関数で閉ループ系を近似しようとするものであり,FRITによる制御系のロバスト性に関連している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FRITをベースとしたデータ駆動型チューニングによる外乱除去について,一つの方法論を得たこと,閉ループ系の感度整形などの手法を考察したこと,他の手法とループ特性を比較するなど,ロバスト化に関したいくつかの成果を得た.また,FRITの評価関数が多入出力系の場合でも有効であることを示し(成果は平成26年度中に発表),シミュレーションにより検証できている.以上より,多入出力系への拡張,ロバスト化の考察という点では一定の成果を得ている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,FRITの安定化に関しては,まだ結果は出せていないので,平成26年度以降,申請者がこれまで培っていた同時安定化問題なども援用し,FRITによる安定化パラメータの獲得方法の提案,または,得られたパラメータが閉ループ系を安定化するか否かを判定する手法の問題に取り組む.また,平成25年度で得られたFRITによる一巡伝達関数の整形の解析結果も用いることで,安定余裕などと関連付けた安定化パラメータの獲得方法にもアプローチを行う. 多入出力化については,目標値応答問題のみならず,感度整形や外乱除去の問題に対してもその拡張を行う.またパラメータが増えた場合の計算方法の改良についても考察する.なお,平成25年度に得られた状態空間に基づくFRIT法も,多入出力系に理論・応用双方の面から拡張する. ロバスト化についても評価規範をH無限大ノルムを用いるなど新しい側面で取り組む.またロバスト性に関連のあるノイズの影響の定量的解析にも取り組む.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)理論的成果の検証実験用に購入を予定していた制御実験装置については,平成25年度中に得られた成果や進捗状況を鑑みて,検証方法の方針を変えたことにより,別の制御実験装置に変更したほうがよいと考えられたことと,そのためのシミュレーションのための準備期間も必要なため,購入時期を変更した.このことにより,平成26年度使用額が生じた. (2)情報収集のために参加予定としていた平成25年度中の国際会議の渡航をとりやめ,成果発表としての国際会議の渡航に使用することに予定を変更したため,平成26年度使用額が生じた. 平成26年度中に,多入出力であること,および安定化制御の検証,という点を念頭にした制御実験装置を購入する予定である.また必要な制御系CADも購入する予定である. 旅費についても11月に行われる国際会議における成果発表に使用予定である.
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