2015 Fiscal Year Research-status Report
大規模結合非負システムの解析手法の確立と社会システム設計への応用
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25420436
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
蛯原 義雄 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80346080)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非負システム / 大規模システム / ネットワーク / 通信遅延 / フォーメーション制御 / 凸最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,複数の非負のサブシステムがネットワークを介して結合することで構成される大規模結合非負システムを対象とし,その解析手法,設計手法に関する理論を確立させるとともに,理論的成果の実システムへの応用・実社会への還元を達成することを目的としている.昨年度からは,サブシステムがネットワークを介して通信を行う場合には通信遅延(すなわちむだ時間)の存在が不可避であることを考慮し,むだ時間を有する非負システムの解析に取り組んできた.本年度はとくに中立型と呼ばれるむだ時間非負システムの安定性解析に焦点を当てて研究を進め,このシステムが安定となるための必要十分条件を非常に簡明な形で導出した.(一般の)中立型むだ時間システムの安定性解析は数学的に非常に取り扱いの難しい問題であることが知られているが,本研究ではシステムの非負性を上手く利用することで必要十分条件の導出に成功している.本研究成果は2016年9月にRome (Italy) で開催されるThe 5th International Symposium on Positive Systems (POSTA 2016) で発表予定(現段階では口頭発表原稿の査読中)である.このシンポジウムは非負システムの研究を主導する世界の著名な研究者が主に発表者を招聘する形で開催されるものであり,筆者もそのような呼びかけを頂いている.また,本年度は,昨年度までに取り組んだ(必ずしもむだ時間を持たない)非負システムの解析や設計に関する研究結果をまとめ,国内学術雑誌に研究論文を1本,解説記事を1本を出版し,国際会議論文として3本の論文発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの3年間の取り組みにより,結合非負システムやむだ時間を有する非負システムの解析や設計に関する理論的成果が着実に得られている.とくに当初は明確な取り扱いを予定していなかったむだ時間を有する非負システムの解析・設計に関する数理は深淵であり興味深い結果が得られている.一方,当初予定していた非線形非負システムの解析や設計に関しては,平成27年度末に基礎研究に着手した段階であり現時点で明確な成果が得られていない.また,非負システム理論の実システムへの応用に関しても,シミュレーションベースの結果に留まっている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は補助事業期間の最終年度にあたるため,本年度はとくにこれまでの研究で得られた成果をまとめ,積極的に論文発表や国際会議における口頭発表を行い,研究成果の発信につとめたい.平成28年度は論文の執筆活動に多くの時間を費やす予定である.また,先述のように平成28年度は POSTA 2016 をはじめ多数の国際会議にも出席予定である.非負システムの研究に携わる世界の優れた研究者との交流を通じて,非線形非負システムの解析や設計と非負システム理論の実システムへの応用に関する知見を深め,研究を進めていきたい.
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Causes of Carryover |
例年海外で開催される国際会議が本年度は日本(大阪)において開催され旅費の出費が少なかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用計画に大きな変更はないが,国際会議に積極的に出席するなどして研究資金を最大限有効に活用し研究の進展を図りたい.
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