2014 Fiscal Year Research-status Report
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25420437
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤本 健治 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10293903)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ベイズ推定 / 確率最適制御 / 統計的学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ベイズ推定等の統計的学習手法を制御工学に応用し、運転データに基づいた制御系の推定・設計手法を与えることにある。これまでにその問題設定及び基礎となる研究を行い、一定の成果を得ている。以下では、推定と制御に分けて成果を記述する。 まず推定に関しては、変分ベイズ法と呼ばれる推定手法を制御工学に応用する問題に取り組んでいる。変分ベイズ法とはベイズ推定の近似解法の一つであり、ベイズ推定のアルゴリズムをそのまま適用すると複雑すぎて計算が困難となるような問題に対して、未知パラメータを互いに独立な変数に分類し、各変数群を交互に推定してゆくことで近似的に解を得る手法である。この推定アルゴリズムは、局所的な収束は保証されているものの、制御工学で一般に用いられる状態空間表現モデルの推定に適用すると、数値的に不安定になることがあった。本研究ではこのアルゴリズムの非線形システムとしての挙動の解析を行い、従来法における変分法を勾配法に取り替えることで、数値的に安定性の高いアルゴリズムを導いている。また、一般に状態空間モデルの推定問題は、伝達関数を求める問題に比べて未知変数に冗長性があり、より難しい問題である。このことから、より簡単な問題である、伝達関数の推定問題に対しても、変分ベイズ法を適用するアルゴリズムを開発している。 設計に関しては、上に述べた手法によって得られる統計的データを制御系設計に利用する手法を開発している。制御対象のシステムパラメータ・制御入力の未来予測値などの統計的情報が与えられているときに、それらのデータを推定し、最適制御を行うための要素技術を開発した。これらは確率的計画法と呼ばれる手法を用いることで、設計に利用することができる。以上のように、推定から制御系設計までの一連の手順を、統計的学習手法に基づいて開発している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の項目で述べたように、統計的学習に基づく制御のための推定・設計手法の大枠が既に得られている。本成果に関する数件の国内外の学会発表や学術雑誌論文の投稿準備を既に行っており、おおむね計画通りに進んでいるといえる。推定に関しては、変分ベイズ法を改良した勾配ベイズ法の提案、勾配ベイズ法に基づく状態空間モデルのシステム同定、変分ベイズ法に基づくARMAXモデルの同定などの手法の開発を行っており、国内外の学会において発表を行っている。制御に関しては、システムパラメータの統計的性質を利用した最適制御手法、および制御入力の未来予測に基づくモデル予測制御手法を開発しており、こちらも学会発表を行っている。このように具体的な成果が多数得られており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては、これまでに得られた結果を応用し、実問題に利用できるようアルゴリズムの改良と応用を行ってゆくことである。具体的には以下のような計画を検討している。 推定問題について。上記で得られたアルゴリズムでは、現段階では簡単なモデルもしくは理想的に単純化されたモデルに対する適用例しか考察できておらず、大規模な実データを扱えるものにはなっていない。状態空間モデル及び伝達関数モデルに対する実用的なアルゴリズムを導くことが第一の課題である。特に、現在は一括処理型の推定アルゴリズムしか得られていないが、これを逐次処理型や並列処理型に改良することで実用化に供すると考えられる。 制御系設計問題について。制御系設計問題に関しては、推定問題に比べてより実用的なアルゴリズムが得られているが、こちらも大規模な問題への対応は十分ではない。計算の逐次化・並列化などの対策を行うことで、規模の大きな実用的な問題に対応できるようにしたい。また、最終的には推定と制御系設計を一つのパッケージにした設計法の開発へとつなげたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初購入予定であった機材が本研究の目的に合わないと判断し、選定に時間を要したため次年度に持ち越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究の提案する制御手法の検証に役立つ実験機の購入と、これまでに得られた成果発表に使用する予定である。
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