2014 Fiscal Year Research-status Report
多用な環境におけるプロピオン酸カルシウムのアルカリシリカ反応抑制効果に関する研究
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25420465
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
岩月 栄治 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (10278228)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アルカリシリカ反応 / プロピオン酸カルシウム / 反応抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
コンクリートの劣化現象であるアルカリシリカ反応は、1983年に社会問題となり、その後1988年に当時の建設省から抑制対策が制定された。しかし現在においても新たな構造物における反応事例の報告があり、コンクリートの製造時における耐久性の重大な課題となっている。抑制対策は、①コンクリートの全アルカリ量をNa2O等価で3kg/m3以下とする、②抑制効果のある混和材を用いる、③反応しない骨材を用いる、の3点である。これに対して①の対策を実施したにもかかわらず反応が確認されていること、②の対策は混和材の利用や施工に問題があること、③の対策に対しては使用実績がある良質な骨材が枯渇していることが問題として挙げられている。このようなことから反応性骨材を用いても容易に抑制が可能な新たな方法の開発が望まれており、これまでに抑制効果が見られる薬品を少量添加する方法で実験的検討を行ってきた。その中でプロピオン酸カルシウムを少量添加することによって長期にわたって抑制効果があることが明らかになった。 本研究ではプロイオン酸カルシウムによるアルカリシリカ反応の抑制の実用化を進めるため、塩水や高アルカリ溶液などが作用する過酷な条件においてもプロピオン酸カルシウムの抑制効果が継続するかを検討した。実験では、コンクリート供試体を作製して、40℃のNaCl飽和溶液と1mol/lのNaOH溶液に浸漬し、膨張率を測定した。 結果では、内務のアルカリ量が9kg/m3のコンクリート供試体においてプロピオン酸カルシウムをセメント質量の1.6、2.25及び3.0%添加すると、いずれのプロピオン酸カルシウム添加量であっても溶液浸漬では膨張が225日時点で抑制されていることが確認された。今後、さらに長期での抑制効果の継続を検討するため、測定を継続する。(成果は平成26年度の土木学会全国大会、及び資源素材学会秋季大会で発表)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点では、供試体の作製を終えて溶液に浸漬し、測定を継続している。今後、長期の反応抑制状況を把握するため膨張測定を継続する。また、屋外に暴露した大型コンクリート供試体は現時点でも反応が進んでおり、この状況を把握する必要がある。よって、これまでに予定していた塩水噴霧試験は27年度に新たに供試体を作製して実施することを検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は、塩水やNaOH溶液に浸漬した供試体の膨張測定を継続して、長期のプロピオン酸カルシウムの抑制効果を検討する。また新たに供試体を作製して屋外暴露における塩水噴霧試験試験を実施する。さらに、これまでに作製した供試体内部の微細な観察・分析(偏光顕微鏡、走査電子顕微鏡、X線マイクロアナライザー、蛍光X線分析等を使用)を行い、プロピオン酸カルシウムの抑制メカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
大型コンクリート供試体の反応が継続していることから塩水噴霧試験による試験を延期した。そのため、塩水噴霧試験に使用する機材購入費と測定に関わる人件費を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでに作製している大型コンクリート供試体における塩水噴霧試験を替えて、新たに作製する供試体で実施する。それに関わる費用は、供試体作製に関わる材料費(約10万円)、作製に関わる補助の人件費(約10万円)、塩水噴霧に関する機材購入(約5万円)膨張率等の測定補助に関わる人件費(約12万円)を計画する。 また、2015年度に実施する抑制メカニズムの解明では、走査電子顕微鏡に関わる費用(約5万円)、X線マイクロアナライザーに関わる液体窒素等の費用(約10万円)、蛍光X線回折に関わる費用(約5万円)、偏光顕微鏡の薄片作成に関わる費用(約25万円)、供試体測定及びデータ整理の補助に関する人件費・謝金に関する費用(約20万円)、研究内容に関わる打ち合わせ旅費(約10万円)、成果発表に関わる投降費用及び旅費(約20万円)、その他運搬費等(5万円)を計画する。
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