2014 Fiscal Year Research-status Report
工期短縮を目指した合成桁RC床版の取替えに関する研究
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25420476
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
中島 章典 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70164176)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 合成桁 / 床版取替え / プレキャスト床版 / グループスタッド / 無収縮モルタル / 養生期間 / モルタル層 |
Outline of Annual Research Achievements |
コンクリート床版(以下,RC床版)が損傷して,取替えが必要となっている合成桁も多い.RC床版を取替える場合,高品質で,施工期間の短縮を図れることからプレキャスト床版(以下,PCa床版)が多用されているが,この場合,ずれ止めとして用いるスタッドをグループ配置し,PCa床版にスタッド用の箱抜きを設け,無収縮モルタルなどによって一体化するのが一般的である. 昨年度の研究結果から,スタッドをグループ配置し,箱抜きを有するPCa床版の合成桁が,十分な本数のスタッドを等間隔配置した場所打ち床版の合成桁とほぼ同程度の合成効果を有する合成桁としての挙動を示すことを確認した.ただし,箱抜きを有するPCa床版を鋼桁と一体化する際に,床版下面と鋼桁上フランジ間に隙間が生じ,これが原因で1つの試験体において早期にせん断破壊が生じた. ところで,スタッドをグループ配置し,箱抜きを有するPCa床版を合成桁に用いる場合には,施工性の観点からできるだけ箱抜き部分を減らすことが望まれる.そこで今年度の研究では,グループスタッド配置数を8箇所および6箇所とした合成桁模型試験体を作製し,静的載荷試験を行った.その際に,PCa床版下面と鋼桁上フランジ間にモルタル層を設けた.一方,箱抜きの無収縮モルタルの養生期間がグループスタッドのせん断力-ずれ変位関係などに及ぼす影響を確認するために,養生期間を変えた押抜き試験体を作製して静的載荷試験を行った. その結果,載荷荷重が大きくなり弾性範囲を超えた領域ではグループスタッド8箇所配置に比べて6箇所配置の合成桁が顕著に不完全合成桁の挙動を示すが,弾性範囲内の曲げ剛性は両者で同程度であり,また,両者の曲げ耐力も大きく変わらない.この観点からグループスタッドの配置数を減少させることの可能性が見いだされた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PCa床版を用い,全長の半分ずつ床版を一体化させた合成桁においても,場所打ちRC床版合成桁とほぼ同様に合成桁としての挙動を示すことを昨年度において既に確認した.そこで今年度は,取替える床版の施工性の観点から,グループスタッドの配置数を減じた合成桁の静的載荷実験を行った.つまり,グループスタッドの配置箇所を8箇所としたものに対して,6箇所に減らした合成桁の挙動を調べた.また,昨年度の実験において,箱抜きを有するPCa床版を鋼桁と一体化する際に,床版下面と鋼桁上フランジの間に隙間が生じる問題が発生した.そこで,PCa床版下面と鋼桁上フランジ間にモルタル層を3mm程度設けて実験を行った. その結果,グループスタッドの配置数を8箇所とした場合に比べ,6箇所としたPCa床版を有する合成桁においても,弾性範囲内の両者の曲げ剛性はほとんど変わらないことを確認した.ただし,弾性範囲を超えたところで,グループスタッドの配置数を減らした合成桁の方が顕著に不完全合成桁の挙動を示すことが確認された.しかし,両者の曲げ耐力はほぼ同程度であり,完全合成桁の理論値に近似していることから,PCa床版を有する合成桁において,所要の合成桁としての挙動を満足しながらグループスタッドの配置数を減じることの可能性が認められた.また,これらの合成桁試験体の実験において,床版下面と鋼桁上フランジの間にモルタル層を設けたことにより,昨年度のような隙間が生じる問題は改善された. 一方,箱抜き部分に充填する無収縮モルタルの養生期間がPCa床版と鋼桁の合成効果に及ぼす影響を調べるために,箱抜き部分にグループスタッドを配置し,無収縮モルタルによって一体化した押抜き試験体の静的載荷実験を行った.その結果,養生期間を1週間程度以上とすれば,十分な合成効果が得られることを確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
2年間の研究結果より,完全合成桁としての曲げ耐力の理論値に至るまでスタッドがせん断破壊しない程度にスタッドを十分に配置した場所打ち床版を有する合成桁と同程度のスタッド本数をグループ配置した合成桁は,場所打ち床版を有する合成桁とほぼ同様の挙動を示し,完全合成桁の理論値に近似した曲げ耐力が得られることがわかった.また,施工性を考慮して,スタッドのグループ配置数を減らした合成桁においても,完全合成桁の曲げ耐力の理論値に対して95%程度以上の曲げ耐力が得られることがわかった.ただし,載荷点の鋼桁下縁フランジが降伏するまでの曲げ剛性は,完全合成桁としての曲げ剛性よりも低下しており,その意味では完全合成桁の条件を満足していない.しかし,スタッドを十分に配置した場所打ち床版を有する合成桁においても同様の挙動を示すことから問題ないと判断される. 今後は,PCa床版内のPC鋼線の配置とスタッドのグループ配置による箱抜き部分の相対的な位置関係を考慮してより現実的なスタッドのグループ配置を満足する合成桁の挙動を確認する必要がある. 本研究では,完全合成桁の理論値に近い曲げ耐力が得られる合成桁においても,弾性範囲の曲げ剛性は不完全合成桁の挙動を示すことが明らかにされた.一方,当初は床版下面と鋼桁上フランジ間にポリマー系セメントを配置して合成効果を高めることを目指したが,既設桁にポリマー系セメントを配置する場合には,鋼桁上フランジの腐食などを完全に除去するケレンが必要なことから施工上の問題がある.したがって,この方法が必ずしも合理的な方法ではないと考えられる.そこで,本研究でのこれまでの結果で得られたように,弾性範囲の挙動が不完全合成桁としての挙動を示すとしても,スタッドの挙動を精査して,使用性の観点からスタッドの適切な配置数を明らかにする.また,これらの挙動を数値シミュレーションにより確認する.
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Research Products
(5 results)