2014 Fiscal Year Research-status Report
ルート破壊に着目した溶接継手の疲労強度評価に関する研究
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25420481
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
舘石 和雄 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80227107)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 疲労 / ルートき裂 / 変位 / すみ肉溶接継手 / 破壊力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き,すみ肉溶接継手のルートき裂を対象とした疲労強度評価法として,未溶着部の変位に着目する手法について検討した.3次元有限要素解析,疲労き裂進展解析,過去の実験結果の考察などを通じて,以下の点を明らかにすることができた. 1)ルートき裂の疲労寿命は,き裂の進展経路長,すなわちリガメント長に大きく影響を受けることを明らかにした.破壊力学による考察により,その影響を取り込むための補正係数を見いだし,これを使って疲労寿命を整理することで,高精度な寿命予測が可能となることを示した. 2)未溶着部の開口変位のみでは,曲げを受ける継手や,未溶着部が荷重軸と平行に存在する場合などにおいて,ルートき裂の疲労寿命を精度よく評価することができないことが明らかとなった.そこで,開口変位に加え,せん断変位の影響も取り込んだ合成変位を用いることを提案し,これによって精度よく疲労寿命が整理できることを明らかにした. 上記の知見を取り込むことにより,溶接継手の形状や載荷モード(引張,曲げ)によらず,ルート破壊する溶接継手の疲労寿命が,未溶着部の変位によって精度よく予測できることを確認することができた. 本手法の適用に必要となるのは,比較的粗い要素分割を用いた有限要素解析のみである.また,物理的な意味が明確で,高精度な解が得られやすい未溶着部の変位に着目した点に新規性がある.本手法は,ルート破壊する溶接継手の疲労寿命を予測するための,簡易で汎用的な手法として活用できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すみ肉溶接継手のルートき裂を対象とした疲労強度評価法を開発することができた.その成果は,論文としてとりまとめることができる段階に至ったと判断し,現在,論文を土木学会論文集へ投稿し,査読審査中である.以上より,上記のように評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
ルート破壊に対する疲労強度評価手法の信頼性を向上させるため,以下の事項について検討を行う. 1)ルート部の溶接残留応力の解明:溶接継手から発生する疲労き裂を論じるにあたっては,き裂発生位置での溶接残留応力の正負やその大きさが非常に重要なポイントとなり,一般に引張残留応力は疲労強度の低下を,圧縮残留応力はその増加をもたらすことが知られている.本研究で着目する溶接ルート部における溶接残留応力は圧縮応力であるとの報告も散見されるが,その程度や,どのような条件の際に圧縮応力が残留するかについては必ずしも十分にわかっていない.そこで,熱弾塑性有限要素解析と,X線残留応力測定装置を用い,溶接ルート部に生じる溶接残留応力の発生性状を解析的,実験的に明らかにする. 2)応力基準の疲労強度評価法の開発:ルートき裂に対する疲労強度評価法として,継手表面の応力分布に着目した手法の開発を試みる.これは,既設構造物の溶接継手への適用を念頭においたものである.すでに解析を終わっている3次元有限要素解析結果を再度見直し,応力基準の手法について検討する. 3)提案する疲労強度評価法の実験的検証:H26年度に提案した未溶着部の変位に着目した疲労強度評価手法の適用性を確固たるものとするため,継手試験体に対する疲労試験を実施し,精度検証を行う.
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