2013 Fiscal Year Research-status Report
河口-沿岸域の土砂ストックとフローのモニタリングシステムの構築
Project/Area Number |
25420516
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
武若 聡 筑波大学, システム情報系, 教授 (80202167)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡辺 拓巳 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50464160)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 河口地形 / モニタリング / Xバンドレーダ / 漁船測深システム / 河口テラス / 水深測定 |
Research Abstract |
Xバンドレーダ,漁船測深システムによる観測体制を確立した.2013年の前半は河口幅が極度に狭まった状況が継続した.7月から9月にかけて,河口の最寄り,右岸側にあった河道内砂州の掘削が行われ,最干潮時水位より高い部分の土砂は取り除かれた.9月15日-17日に出水があり,河道内の砂州が浸食し,河口幅が拡大した.ただし,河道内砂州の掘削効果は顕著に現れておらず,河口付近の澪筋はここ数年の出水時の経過とほぼ同様に左岸側に形成された.出水で拡大した河口幅は年内に狭まり,ほぼ出水前の幅となった. 天竜川河口の右岸側船着場に停泊する小型船を対象とし,設備面での条件を満たした船を2 隻選定して関係者から協力を得るとともに,データロガーやGPS アンテナの設置工事を行った.2013 年9 月以降,延べ37 回の出漁時の操業中ログを取得した.台風18 号の出水に伴う河口砂州の地形変化によって航路が変わるなど,得られるデータの特徴をX バンドレーダー画像も併用して把握した.浅すぎると測深値が飽和する課題も発見され,カヤックを用いた測深調査を行うなど対応を検討した.河口地形の解析手法としては,既存システムで得られるデータ量の多い浜名湖今切口の引き潮デルタをモデルケースと位置づけ,沿岸漂砂量の推定方法を検証した. 気象庁が配信している波浪推算予測データ(通称GPV-CWMデータ)を沿岸域の外力評価に使用できるかを検討した.GPV-CWMより沿岸方向エネルギーフラックスを算定し,これと河口砂州先端位置の沿岸方向移動速さとの相関を調べたところ,良好な関係性が認められた.GPV-CWMを波浪データの観測値の取得が難しい海域の外力評価に使用できる可能性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Xバンドレーダによる地形の連続モニタリングシステムは完成した.出水,高波浪のイベントを逃さずに観測する体制が整った.漁船による測深システムが稼働して操業時ログが取得できるようになったことで,本研究の初年度におけるモニタリング手法構築の計画は達成できた.加えて,既存の測深システムにはない課題を発見したこと,大規模な出水により河口砂州が大きく変形した台風18 号の前後で操業時ログを取得できたことは,研究を進める上で貴重な情報となった.これらのデータ解析手法の構築については,浜名湖今切口で妥当性の高い沿岸漂砂量を推定できたことで,海域での土砂移動プロセスの評価手法の基礎を固めた.流動観測については出水時の計測機会を逃してしまったが,連携関係にある浜松河川国道事務所より流量データを提供してもらうなど,補足情報の入手によりカバーできるものと考えている.以上のことより,研究はほぼ計画通りに進捗していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
・河道掘削の効果の観測(出水時の流動パターンの変化,再堆積 の有無) ・出水に伴う河口テラスの形成,波浪の作用による河口テラスの消長の観測 ・GPV-CWMを活用した土砂動態のナウキャストの可能性の検討 漁船測深システムはメンテナンスなどを継続して安定的な運用を続ける.取得ログについては,外洋側の既存の漁船システムと合わせて地形データを扱えるよう,データベースの統合化を進める.遠州大橋より河口にかけて,カヤックなどによる河床測深を定期的に行うことに加え,出水時の流速・濁度の観測を試みる.ソフト面では,河床の漁船測深ログから河床変動を解析する方法を確立することが重要である.定期測深データのマージや,出水・波浪に対する河口地形の応答特性から河川・海域での土砂輸送過程の推定を試みる.また,X バンドレーダーで得られる地形などの情報と組み合わせた,統合的なモニタリングシステムとしての深化を図っていく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
規模の大きい出水後,あるいは,高波浪来襲後に河道内と河口付近の詳細測量(一部を業務として委託)を予定していた.しかしながら,年度中に大規模な出水,高波浪の来襲がなかったため,詳細測量を実施しなかった. Xバンドレーダ,漁船測深システムによる観測を継続し,規模の大きい出水,あるいは,高波浪来襲の後に河道内と河口付近の詳細測量を実施するのに備える.
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