2014 Fiscal Year Research-status Report
Hyporheic exchangeによる流域水田からの栄養塩流出に関する研究
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25420532
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Research Institution | Oita National College of Technology |
Principal Investigator |
東野 誠 大分工業高等専門学校, 都市・環境工学科, 准教授 (90311117)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Hyporheic exchange / 硝酸性窒素 / 水田 / 水質汚濁 / 化学肥料 / 降雨流出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,大分市内を流れる大分川を対象として,流域水田から河川へと流出する硝酸性窒素(NO3-N) について検討を行った.とりわけ,水田からのNO3-Nの流出に及ぼす降雨の影響に着目して,梅雨期を中心に大分川府内大橋周辺で採水,そして水質を分析し,NO3-N流下負荷量と河川流量との関係を調べるとともに,雨量強度がNO3-N流出に及ぼす影響について考察した. 雨天時のNO3-N の河川流下負荷量は晴天時のそれのおよそ3~12倍であり,降雨によって水田から流出したと思われるNO3-Nが観測された.本研究で対象とするような水田から河川へと流出する栄養塩は,非特定(ノンポイント)汚染源と呼ばれ,家庭雑排水や家畜舎等からの排水のような汚染源の特定と定量化が比較的容易な特定汚染源と区別されている.このような非特定汚染源に関しては,L-Q式に代表されるように,汚濁負荷量(L)が河川流量(Q)の関数として表現される場合が多い.そこで,調査より得られた大分川府内大橋での河川流量とNO3-N流下負荷量との関係をしらべた結果,検討対象地点においてもL-Q式が有効であることを確認した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大分市,大分川府内大橋における継続的な降水量,河川流量,および硝酸性窒素の観測結果に基づいて,降雨量や雨量強度と河川周辺の水田から流出する硝酸性窒素の負荷量との関係を明らかにした.また,雨滴が水田の水表面に落下するときに生ずる,水面での圧力変動が水田土壌内部に微弱な流れ場を駆動し,これによる水田土壌間隙水中に含まれる化学肥料由来の硝酸性窒素が河川へと流出する過程をモデル化した.このモデルの妥当性を検証するために,モデルによる推定値と上述の大分川府内大橋での現地観測結果とを比較検討した. 以上より,概ね当初の予定通り研究は順調に進展していることを確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
国内,および海外(アメリカ合衆国,ミネソタ州)において現地調査・観測を行い,データを収集する.本研究では,水田等の土壌から河川への硝酸性窒素の流出に着目し,研究代表者によるこれまでの"Hyporheic exchange"の研究成果,および雨量強度と雨滴のサイズ,落下速度に関するMarshall & Palmer(1948)の研究成果を応用してモデルを構築する.平成27年度は,前年度までに得られた大分川流域の水田から河川への硝酸性窒素の流出の観測データに加えて,他の水域においてもデータを収集し,モデルによる推定値とを比較してモデルの妥当性,および実水域への適用性を検証する.そして,モデルをより実用的なものへと改良してゆく. 次に,本モデルを既存の流れや水質・生態系モデルとリンクさせて,実水域での水質・生態系予測を試みるとともに,最終的にはコンピュータ言語に関する特別な知識がなくても使えるような実用的,かつユーザーフレンドリーなものに仕上げてゆく予定である.
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Causes of Carryover |
当初,予定していた現地観測と水質分析に必要な消耗品について,研究代表者が勤務する大分高専に幾つかの水質分析機器が設置され,これを活用できるようになったため,これらを購入する必要がなくなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は,大分川流域以外にも研究対象を拡大する予定であり,そのための調査旅費,および消耗品費に充当する予定である.
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