2014 Fiscal Year Research-status Report
都市高速道路を対象としたリアルタイム交通事故予測・回避システムの構築
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25420535
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
室町 泰徳 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (40251350)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
兵藤 哲朗 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (40218748)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 交通事故 / 都市高速道路 / リアルタイム / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、リアルタイム交通事故予測システムのフレームワークに整合するリアルタイム交通事故回避システムの構築を行った。まず、ベイジアンネットワークに基づいてリアルタイム交通事故予測システムを構築した。システム構築用のデータとしては、首都高速4号新宿線の平成26年3月から8月のディテクターデータと交通事故データを用いた。また、入力としては、交通事故が生じたケースに関しては、発生時刻の5分前の発生場所の上流と下流のディテクターにおける速度差、交通量差、オキュパンシー差を用いた。交通事故が生じなかった正常なケースに関しては、同じ曜日の他の日の同時刻における5分前のデータを用いている。システムの予測パフォーマンスを検討したところ、交通事故ケースに対して70%、正常なケースに対して61%の予測可能性を示した。 次に、特定の1日を対象に、首都高速4号新宿線の路線全体にリアルタイム交通事故予測システムを適用し、路線全体を対象としたリアルタイム交通事故予測を行った。その結果、集計的な交通事故統計からも確認できる交通事故多発区間の他、リアルタイムな交通状況の変化により交通事故が発生する可能性のある区間を抽出することができた。これらの区間を対象に、交通事故に至りやすい交通状況から正常な交通状況に戻すための交通事故回避手段の検討を行った。具体的な回避手段としては、最高速度規制、最低速度規制、オンランプのランプメタリング、車線変更規制などを検討した。また、回避手段の実施による交通状況の変化を表現するために、交通シミュレーションソフトPTV-Vision VISSIM を導入し、首都高速4号新宿線の路線全体の交通状況を再現するためのプラットフォームの作成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、首都高速4号新宿線の路線全体を対象に、リアルタイム交通事故予測システムのフレームワークに整合するリアルタイム交通事故回避システムの構築の検討を行うことができた。同路線に関するより精度の高い新たなディテクターデータと交通事故データを用いたために、リアルタイム交通事故予測システムの構築にも時間を要したものの、よりパフォーマンスの高いシステムを構築することが可能となり、この点はリアルタイム交通事故回避システムのパフォーマンスにも反映することができる。 また、路線全体に対するリアルタイム交通事故予測システムとリアルタイム交通事故回避システムの適用は、平成27年度に実施する予定であったが、新たなデータのマネジメントを特定区間ではなく、路線全体で行うようにリアルタイム交通事故予測システムを構築したために、一部、平成26年度において先行的に実施することが可能となった。その結果、路線全体を俯瞰しながら、交通事故回避手段の検討を行うことが可能となり、オンランプ近傍や渋滞時における回避手段の制約などの理解が進み、より現実に即した回避手段の選択、およびリアルタイム交通事故回避システムの構築を行うことができるようになったと考えられる。 一方、交通シミュレーションソフトPTV-Vision VISSIM の導入がやや遅れたために、平成26年度中に首都高速4号新宿線の路線全体の交通状況をシミュレーションにより再現するには至らなかった。交通状況を再現するためのプラットフォームの作成自体は進んでおり、平成27年度の早期にシミュレーションによる再現が可能となるように作業を進めている。以上の状況を総合的に考慮し、おおむね順調に進展している、と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、まず、交通シミュレーションソフトPTV-Vision VISSIMを利用し、 首都高速4号新宿線の路線全体の交通状況をシミュレーションにより再現する。その後、平成26年度に検討した交通事故回避手段、例えば、最高速度規制、最低速度規制、オンランプのランプメタリング、車線変更規制などを実施した場合の交通状況の変化をシミュレーションする。また、交通事故回避手段の実施による交通状況の変化をリアルタイム交通事故予測システムにフィードバックし、交通事故に至りやすい交通状況から正常な交通状況に変化しているかどうか、また、変化している場合には、どの回避手段がもっとも有効か、といった点に関して検討を行う。 さらに、交通事故回避手段の実施が研究対象路線全体に与える2 次的影響の評価を行い、評価結果を基に交通事故回避手段の選択を行うモデルを構築し、これをシステムに組み込む。これは、交通事故回避手段の実施により、特定の区間における交通状況を交通事故に至りやすい状況から正常な状況に改善するに際して、他の区間が交通事故に至りやすい状況に変化することを避けるためである。このようなモデルをシステムに組み込むことにより、研究対象路線全体の交通事故に対する安全性の向上が図られることとなる。さらに、リアルタイム交通事故予測システムと交通事故予回避システムとを連動させて、研究対象路線に一定期間適用し、システム全体の交通事故の防止効果の評価を行い、これを実際に適用する際の課題に関して整理する。 最後に、リアルタイム交通事故予測システムとリアルタイム交通事故回避システムの構築に関する知見をまとめ、土木学会や交通工学研究会などの関連する学会に論文として投稿し、報告書を作成する。
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Causes of Carryover |
研究協力者1人を科学研究費研究員として特定有期雇用し、データ解析を行う予定であったが、当該研究協力者の都合により、平成26年度は予定よりも短い期間した雇用できなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に予定よりも短い期間しか雇用できなかった研究協力者1人を科学研究費研究員として平成27年度も特定有期雇用し、引き続きデータ解析を行うこととする。
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