2013 Fiscal Year Research-status Report
開発途上国における自然災害と貧富の格差,インフラと経済成長に関する研究
Project/Area Number |
25420545
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
横松 宗太 京都大学, 防災研究所, 准教授 (60335502)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 災害リスク / 防災投資 / 経済成長モデル / 不平等 / ガーナ / 交通施設 |
Research Abstract |
本課題では,開発途上国を対象に,自然災害が貧富の格差を拡大させることを通じて,国や地域全体の経済成長の障害となることを理論的に示すことを試みる.さらに,ガーナ農村部等を対象にした実証研究を行う.そこでは低所得農家のモビリティが格差拡大の根本的原因であるという仮説を検証する.そして交通基盤施設や防災施設の整備に,貧富の格差縮小を通じた経済成長効果があることを定性的・定量的に示すことを目的とする. 25年度は自然災害とマクロ経済の関係や,不平等とマクロ経済成長の関係に関する文献レビューを行いながら,災害リスク下のマクロ経済成長モデルを定式化した.そこでは災害が低所得層の家計の人的投資すなわち教育機会を阻害する問題に着目した.そして,最適化条件の定性的分析と,パキスタンを対象とした数値シミュレーションを行った.その結果,防災投資による災害リスクの低減は,GDPの成長と同時に,低所得層の人的投資を促進することを通じて,貧困の罠からの脱却に資する可能性をもつことが示された.同時に,ジニ係数等で表される不平等の縮小を達成するためには,空間的な家計の立地均衡や防災投資効果の地域性等を考慮する必要があることが明らかになった.25年度の成果は,2013年の国際総合防災学会等で口頭発表すると同時に,IEEE-SMCに投稿した. また,実証研究のために,ガーナ農村部のワ市にて2度の現地調査を行い,インタビュー調査とアンケート調査を実施した.調査では農村家計がもつ交通手段や資金調達の手段等を質問した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガーナ側の研究協力者の都合により,予定していた現地調査の1回が26年度に延期となった.それによって農村調査のサンプル数が若干不足している. また,経済成長モデルのキャリブレーションを進める過程で,人的資本の代理変数や人的投資関数の同定が難しいことが明らかになった.今後,文献レビューやデータの整備状況などをより詳細に調査していく.
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Strategy for Future Research Activity |
ガーナでの農村部調査に関しては,まずは現在までに得られたデータを用いて仮説を精緻化し,モデルの定式化を行う予定である.その後に補足調査の方法について検討する. 一方,パキスタンも対象に取り入れることにする.災害ハザードデータの利用可能性が向上したからである.インダス川の堤防整備に関する,整備地点による不平等縮小の効果などを明らかにできるようになると期待される.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1回分のガーナ出張が,ガーナ側の研究協力者の都合で行えなくなったため,26 年度に延期したため. 26年度にガーナでの現地調査を実施する.
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