2013 Fiscal Year Research-status Report
界面活性剤を用いたクリプトスポリジウム高感度検出技術の開発と病原性判定への応用
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25420559
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
関川 貴寛 静岡県立大学, 付置研究所, 助教 (20511728)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | クリプトスポリジウム / 病原性原虫 / PCR法 / LAMP法 / 核酸抽出 / 界面活性剤 / 逆転写酵素 / 飲料水 |
Research Abstract |
研究代表者らは、これまでに界面活性剤のみを用いたクリプトスポリジウムDNA抽出法の検討を行い、凍結融解および核酸精製工程を必要としない界面活性剤抽出処理(Surfactant extraction treatment; SET)法の確立に成功している。しかし、rRNA検出へのSET法の応用はこれまで検討されていなかった。細胞中のrRNAはDNAよりも格段に多く存在しているため、rRNAを指標にすることでオーシストを高感度に検出できる。 本年度は、オーシストからの核酸抽出工程の簡略化および高感度検出を目的とし、SET法に用いる陰イオン界面活性剤sodium dodecyl sulfate(SDS)と非イオン界面活性剤Tween 20がワンステップ逆転写LAMP法(RT-LAMP法)に及ぼす影響を評価した。また、SET法とRT-LAMP法を用いてクリプトスポリジウム18S rRNA遺伝子の抽出・増幅を行い、検出感度を評価した。 オーシスト1個相当の核酸溶液とRT-LAMP試薬を投入した反応チューブに任意の濃度のSDSまたはTween20を添加し、核酸増幅の有無を確認した結果、SDS濃度0.1%(v/v)で増幅阻害が確認された。Tween 20は5%でも増幅阻害は見られなかった。また、SDSで阻害された反応液の阻害抑制を検討した結果、SDS濃度0.1%による阻害は5% Tween 20の添加で抑制された。 SET法を用いてオーシストからの18S rRNA遺伝子の検出感度を評価した結果、オーシスト0.001個相当を検出することができた。以上の結果より、SET法がRT-LAMP法に応用可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画どおりに研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、SET法を用いてオーシストから18S rRNAおよびヒートショックタンパク質(HSP)遺伝子由来mRNAの抽出法を検討し、RT-LAMP法とRT-PCR法によるクリプトスポリジウムの高感度検出法および生死判定法の基本技術の確立を目指す。本技術の確立により、従来のオーシスト破砕工程や核酸精製工程等の煩雑な作業が不要となり、クリプトスポリジウムの病原性判定法の「簡便・高感度・低コスト」化が実現できるであろう。したがって、既存のクリプトスポリジウム遺伝子検出法の代替法または一部を補完する検出法としての利用が期待できる。 平成25年度に得られた結果を基にして、SET法を用いたRT-LAMPによるクリプトスポリジウムmRNAの高感度検出と生死判定を検討する。クリプトスポリジウムHSP70遺伝子のmRNAに特異的なプライマーセットを用いたRT-LAMPにより、簡便RNA抽出法のmRNA抽出能を評価する。また、SET法を用いたリアルタイムRT-PCRによるHSP70遺伝子mRNAの検出条件の検討も行い、検出感度をRT-LAMPと比較する。これらの検討により、オーシストからのmRNAの検出感度を明らかにし、生死判定への応用を実現する。 平成26年度に得られた結果を基に、SET法を用いて、河川水中のクリプトスポリジウムRNAの検出を行い、検出感度と生死判定を評価する。河川水の採取は、主に都市河川や水道原水から行う。河川水試料をろ過濃縮後、クリプトスポリジウム分離濃縮用免疫磁気ビーズを用いてオーシストを精製し、SET法とRT-LAMP法とRT-PCR法を用いて検出する。 以上の計画を推進し、SET法によるクリプトスポリジウム検出の「簡便・高感度・低コスト」化を実践的に評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
既に購入済みのクリプトスポリジウムオーシスト試料と核酸増幅関連試薬を使用することができたため、今年度使用額は予定よりも少なくなった。 次年度の実験回数を増やし、より研究を進展させるために、次年度使用額は核酸増幅関連の物品費として使用する予定である。
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