2014 Fiscal Year Research-status Report
界面活性剤を用いたクリプトスポリジウム高感度検出技術の開発と病原性判定への応用
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25420559
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
関川 貴寛 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (20511728)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | クリプトスポリジウム / 病原性原虫 / PCR / LAMP / 逆転写酵素 / 核酸抽出 / 界面活性剤 / 水道水 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、界面活性剤抽出処理(Surfactant extraction treatment; SET)とReverse transcription-PCR(RT-PCR)を用いた18S rRNAの検出条件を検討した。 陰イオン界面活性剤sodium dodecyl sulfate(SDS)によるRT-PCR阻害の抑制に適した非イオン界面活性剤を選択するために、SDSと非イオン界面活性剤(Tween 20、Tween 80、Triton X-100、Triton X-114)がRT-PCRに及ぼす影響および各非イオン界面活性剤による阻害抑制効果を評価した。その結果、Tween 20による阻害抑制効果が最も高いことが明らかになった。 界面活性剤が逆転写反応およびPCRに及ぼす影響を評価した結果、両反応ともに陰イオン界面活性剤(終濃度5%)では阻害されなかったが、SDS濃度0.01%で阻害された。また、Tween 20による阻害抑制効果を評価した結果、逆転写反応においてもPCR同様にSDS濃度0.01%による阻害を抑制できることがわかった。 SDS濃度0.1%溶液にオーシスト投入後、加熱処理(90℃、15分間)を行い、オーシストから18S rRNAを含む核酸を抽出した。10倍希釈した核酸溶液(SDS濃度0.01%)にTween 20を添加することで、SDSによる阻害を完全に抑制することができた。また、SETで抽出された核酸の検出感度は陽性対照とほぼ同じであったことから、SET法の工程が18S rRNAの検出感度に影響していないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画どおりに研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、SETを用いてオーシストから18S rRNAおよびヒートショックタンパク質(HSP)遺伝子由来mRNAの抽出法を検討し、RT-PCRとRT-LAMPによるクリプトスポリジウムの高感度検出法および生死判定法の基本技術の確立を目指す。これらの技術は、既存のクリプトスポリジウム遺伝子検査法の代替法または一部を補完する検査法として利用できる。当該年度は、SETを用いたRT-PCRによるクリプトスポリジウムmRNAの高感度検出と生死判定を検討するためにクリプトスポリジウムHSP70遺伝子のmRNAに特異的なプライマーセットを設計・作製した。その結果、オーシストからのmRNA検出に成功している。 次年度は、HSP70遺伝子のmRNAに特異的なプライマーセットとRT-PCRを用いて、SETのmRNA抽出能を評価する。また、RT-LAMP用のプライマーセットも作製し、mRNAの検出条件を検討する。 上記検出条件の検討後、河川水中のオーシストから核酸を抽出し、検出感度と生死判定を評価する。河川水の採取は、主に都市河川や水道原水から行う。河川水試料をろ過濃縮後、クリプトスポリジウム分離濃縮用免疫磁気ビーズを用いてオーシストを精製し、SETとRT-PCRまたはRT-LAMPを用いて検出する。 以上の計画を推進し、SETによるクリプトスポリジウム検出の「簡便・高感度・低コスト」化を実践的に評価する。
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Causes of Carryover |
前年度に購入した核酸増幅関連試薬の一部を当該年度に使用することができたため、当該年度使用額は予定よりも少なくなった。 また、当該年度に予定していた国際会議への参加を次年度に変更した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験データを充実させるために次年度の試料数と実験回数を増やす予定なので、次年度使用額は核酸増幅関連試薬の購入費として使用する。 また、次年度に国際会議への参加および研究発表を行う予定である。
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