2015 Fiscal Year Research-status Report
界面活性剤を用いたクリプトスポリジウム高感度検出技術の開発と病原性判定への応用
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25420559
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
関川 貴寛 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (20511728)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | クリプトスポリジウム / 核酸抽出 / 界面活性剤 / リアルタイムPCR / 免疫磁気ビーズ / 河川水 / 水道水 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、オーシスト精製工程の簡略化および検出精度の向上を目指し、環境試料からのオーシスト回収法として広く用いられている免疫磁気ビーズ法と界面活性剤抽出処理(Surfactant extraction treatment:SET)法の併用を検討した。クリプトスポリジウムDNAの検出は18S rDNAに特異的なプライマーセットとTaqManプローブ、リアルタイムPCR(LightCycler Nano, ロシュ・ダイアグノスティックス)を用いて行った。 陰イオン界面活性剤SDS溶液(SDS濃度0.1%)で加熱処理(90℃,15分間)した免疫磁気ビーズ(Dynabeads anti-Cryptosporidium,Invitrogen)がPCRに及ぼす影響を評価した結果、SDS濃度0.01%でPCRが阻害された。しかし、非イオン界面活性剤Tween20の添加によってPCR阻害を抑制することができた。 オーシストが結合している免疫磁気ビーズからSET法を用いて直接核酸を抽出した結果、オーシストの回収率は遠心分離で回収した場合とほぼ同じだった。以上の結果から、免疫磁気ビーズ法とSET法の併用が可能であることが示された。 静岡県内の水道水源となっている河川表層水を10 L採水し、その表層水にオーシストを添加して試料水を調製した。免疫磁気ビーズ法とSET法を併用して試料水から直接核酸を抽出した結果、オーシストの回収率は約55%であった。また、オーシストを添加した蒸留水10Lからの回収率は約71%であった。試料水のフィルターろ過および免疫磁気ビーズ法の工程で回収率が大きく低下していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度に採取した環境水を調査した結果、オーシスト濃度が想定よりも低いことがわかったため、平成28年度に試料採取を追加して行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
試料中からクリプトスポリジウムDNAを検出する場合、死んでいるクリプトスポリジウムのDNAを検出する可能性がある。一方、mRNAは生物の死後すばやく分解されるので、ヒートショックタンパク質(HSP)遺伝子由来のmRNAは生死判定の指標として利用されている。本研究では、SET法を用いたクリプトスポリジウムDNAおよびHSP mRNAの抽出法を検討し、クリプトスポリジウムの高感度検出法および生死判定法の基本技術の確立を目指す。これらの技術は、既存のクリプトスポリジウム遺伝子検査法の代替法または一部を補完する検査法として利用できる。 これまでの研究において、クリプトスポリジウム18S rRNAおよびHSP mRNAに特異的なプライマーセットを作製し、リアルタイムPCR法による18S rRNAとmRNAの検出に成功している。平成27年度は環境水中のオーシストを検出し、その結果についてまとめる予定であったが、採取した環境水を調査した結果、試料中のオーシスト濃度が想定よりも低いことがわかったため、平成28年度はさらに試料採取場所を増やして調査を行う予定である。環境水は都市河川や水道水源、下水処理場などから採取する。環境水試料をろ過濃縮後、クリプトスポリジウム分離濃縮用免疫磁気ビーズを用いてオーシストを精製し、SET法を用いて核酸を抽出する。 以上の計画を推進し、SET法によるクリプトスポリジウム検出の「簡便・高感度・低コスト」化を実践的に評価する。
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Causes of Carryover |
前年度に購入した核酸増幅関連試薬の一部を今年度に使用することができたため、今年度使用額は予定よりも少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
補助事業の目的をより精緻に達成するための追加実験の実施や学会参加、論文投稿に使用する予定である。
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