2015 Fiscal Year Research-status Report
鉄筋コンクリート柱のせん断破壊を許容できる耐震設計手法に関する研究
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25420573
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中村 孝也 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50305421)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 鉄筋コンクリート柱 / 曲げ降伏後せん断破壊 / 軸力上昇 / 崩壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
複数種の柱が混在する鉄筋コンクリート(RC)建物では地震時に,脆性的な柱が先にせん断破壊して軸力負担が減少すると同時に,減少した分の軸力が梁を介して周辺の比較的靱性のある柱へ移動し,その柱の軸力が上昇すると考えられる。こここで,軸力上昇する柱は,それを考慮しない場合と比べて,構造性能が低下すると考えられるが,その性状は明らかにされていない。そこで,比較的靱性のある曲げ降伏後せん断破壊するRC柱の軸力上昇を考慮した崩壊実験を行った。 1/2スケールの試験体を3体作製した。試験体の形状,配筋は同一で,柱断面寸法300mm×300mm,主筋比1.69%,横補強筋比0.21%とした。鉄筋とコンクリートは普通強度のものを使用した。加力は逆対称変形を保つ形式とした。軸力比は0.2から0.3に上昇させた。軸力上昇する柱では、どこで軸力が増加するのかは相手の脆性的な柱に依存する。そこで軸力上昇時の水平変形(部材角)は,試験体FS2-3Aでは3.75%,FS2-3Bでは 2.87%,FS2-3Cでは2.5%の3種類とした。載荷履歴は、水平変形(部材角)±0.5%、±1%、±2%を各1サイクル加えた後、軸力を保持できなくなり崩壊するまで正方向に押し切る載荷を原則とした。 実験の結果,以下の知見が得られた。1)部材中央部にせん断ひび割れが発生した後に軸力を上昇させたFS2-3AとFS2-3Bの崩壊水平変形を比較すると,それぞれ3.96%と3.75%であり差異が小さいことから,部材中央部せん断ひび割れ発生後に軸力が上昇する場合,軸力上昇時の変形が崩壊水平変形へ与える影響は小さい。2)部材中央部せん断ひび割れが発生する以前に軸力を上昇させたFS2-3Cは,FS2-3A及びFS2-3Bと比べて,崩壊変形が大きかった。FS2-3Cではせん断ひび割れ発生前に軸力を上昇させたため,軸力上昇からせん断ひび割れ発生までの間に部材端部の破壊が進行し,より曲げ的な破壊が生じたためであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度までに行った研究の概要を以下に示すが,おおむね順調に推移していると考えている。 大地震時における脆性的な柱の崩壊(軸力保持能力喪失)およびそれに付随して発生する層崩壊は,建物に生じる最も危険な破壊形態である。これは旧耐震基準で設計された建物に生じることが多いが, 比較的新しい建物にも脆性柱が含まれる場合もあり,これらの建物の安全性を確保する上では,層崩壊に至るまでの挙動をできるだけ正確に考慮して耐震性評価を行うことが重要である。ここで,複数種の柱が混在する鉄筋コンクリート(RC)架構では,大地震時において,脆性的な柱が先にせん断破壊して鉛直変形が増大すると,その柱の軸力が減少すると同時に,減少した分の軸力が梁を介して周辺の比較的靱性のある柱へ移動し,その柱の軸力が上昇すると考えられる。このような複数種の柱からなる架構の崩壊点を考える際,破壊過程における軸力再配分によって軸力が減少あるいは上昇する柱の崩壊性状を把握することが重要である。そこで,従来未検討であった軸力再配分によって軸力が上昇するRC柱を対象とした静的加力実験を行った。対象は架構の中で比較的靱性があるせん断破壊型柱および曲げ降伏後せん断破壊型柱とし,軸力上昇のタイミングや軸力上昇度合がその崩壊性状に及ぼす影響を考察した。更に,既往の崩壊水平変形推定式に対して,従来未検討であった軸力上昇する柱における適合性を検証した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度までに行ったRC柱の軸力上昇を考慮した崩壊実験において,次のような課題が生じた。すなわち,平成27年度までの実験では軸力上昇時の水平変形や軸力の上昇度合を数パターンのみ考慮したのであるが,現実には,それらは建物の破壊状況に応じて様々な様態を取り得るため,更なる実験変数を用意して実験を実施する必要があると考えられる。その際,以下に示すように多数回繰り返し応答と軸力上昇の関係を併せて検討する。
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Causes of Carryover |
当初計画を策定した後,国内外で発生した大地震における建物の被害状況を検証したところ,新たに多数回繰り返し応答が柱の破壊性状に及ぼす影響を考慮する重要性が明らかとなった,そこで,より詳細な調査を実施した上で実験を行う必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
まず,近年の大地震における建物の被害状況を整理・分析する。その上で鉄筋コンクリート柱の実験計画を策定し,試験体製作および加力実験を行う。これは多数回繰り返し載荷を考慮した崩壊実験とする予定である。
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Research Products
(3 results)