2013 Fiscal Year Research-status Report
年間を通して理想的な日射反射特性を示す指向性反射材による環境負荷軽減建材の開発
Project/Area Number |
25420587
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
酒井 英樹 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (90277830)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 環境材料 / 日射反射率 / 再帰反射率 / ヒートアイランド / 都市環境 |
Research Abstract |
本研究では,季節によって太陽の軌跡が異なることを利用することで,夏は太陽光を反射して涼しく,冬は太陽光を吸収して暖かくなるという特殊な光学特性を持った建築屋根,外壁材の開発を目指している。実用化すれば,夏場は,建物が暖められにくくなることで,冷房の使用を減らすことができ,逆に,冬場は建物が暖められることで,暖房の使用を減らすことができるため,年間を通じて省エネルギーに寄与し,環境負荷を軽減することができる。その実現方法は,夏の太陽は高く上り,角度のついた光であるのに対して,冬の太陽は低い位置にとどまり,水平に近い角度からの光であることから,角度ごとに反射率が異なる反射指向性を組み合わせることである。具体的には,レンズを敷き詰めて,太陽光をレンズで一旦集光し,夏の太陽光が集光する位置には高反射体を置くことで反射させ,冬の太陽光が集光する位置には,吸収体をおくことで熱として吸収させる。 研究期間の初年度である本年度は,主に,建築外皮に適したレンズ形状の探索,及び,加工方法の開発に取り組んだ。その結果,レンズ形状としては,球形のものが設計,加工ともにしやすく,それらを,蜂の巣状(ハニカム構造)に配列することでレンズ間の隙間がもっとも小さくなり,建築材料として適していることが分かった。また,太陽の軌跡は,地球上の地点(緯度,経度)によって異なるが,レンズ後方に設置する反射・吸収体の位置を調整することで,地点ごとに最適な反射指向性を付与できることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したように,概ね交付申請書に掲げた研究目的,研究実施計画に沿って研究が進んでおり,とくに問題となる事象も発生していないことから,おおむね順調に進展しているとした。ただし,建築外皮に適したレンズ形状,および,加工方法について,一定の結論は得ているが,すべての可能性を網羅している訳ではないため,次年度以降も,レンズ形状の探索,および,加工方法の更なる改良についても,継続して取り組む予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
残り2年の研究期間を通じて,以下の問題に取り組む。まず,平成26年度は,適用地点ごとに異なる太陽軌跡の季節変動に対する最適な指向特性の選択手法を考案するとともに,指向性反射材の加工技術の開発を継続する。また,25年度に作成した試験試料について,年間を通じた性能及び耐久性を明らかにするために,建物屋上(申請者の勤務先である大学建物の屋上を予定)に設置し,通年暴露試験を開始する。そして,測定した熱物性データを元に,提案する指向性再帰反射建材を,従来の日射高反射材,保水性建材,緑化対策など,他のヒートアイランド緩和材と比較し,材料単体としての優位性の実証を行う。さらに,ヒートアイランド対策として,最終的に求められる一定面積に対して適用した場合に,都市街区に対して与える影響(局所気温の低減効果など)を予測するための放射環境シミュレーション手法の開発を開始する。 つぎに,平成27年度は,前年度までに得られた指向性を含む日射反射特性データに基づき,都市街区での放射環境シミュレーションを行い,夏場の都市街区空間の暑熱環境(ヒートアイランド)の緩和効果,冬季の暖房負荷軽減効果を予測し,温室効果ガスの削減効果,および,経済性評価を行い,指向性再帰反射建材の優位性を示していく。そして,環境負荷軽減建材として好ましい反射指向性(夏の太陽軌跡に対して反射率が高く,冬の太陽軌跡に対して反射率が低くなる)を有する指向性再帰反射材の設計方法を示し,新建材として提案する。
|