2014 Fiscal Year Research-status Report
動的縮約モデルを用いた柔床・多構面モデルの非線形システム同定法
Project/Area Number |
25420596
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
吉富 信太 立命館大学, 理工学部, 教授 (30432363)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 木造建築 / システム同定 / 非線型 / 物理パラメター |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,前年度に引き続き木造建物を想定した構造モデルに対するシステム同定法の理論構築を行った.既往のシステム同定法では主にせん断モデルを対象として,振動特性を推定する問題を扱う場合が多い.その一方で,多層モデルや剛床仮定の成立しない木造建築物などの場合,せん断モデルとしての扱いでは構造物の特性を十分に表現できないと考えられる.そこで本研究課題では,従来扱われることの少ない,柔床と多構面で構成されるモデルでかつ各構面が非線形特性を有する場合にも適用可能な手法の開発を試みた.本年度は各構面と床面がバイリニアの履歴特性を有するモデルに対して,各構面の振動を計測することで,適切に非線形特性を推定可能な手法を提案した.数値解析に基づくシミュレーションで提案手法の妥当性を検討したところ,各構面の剛性及び非線形特性を推定できることが示された.システム同定法は一般的には損傷推定のための技術として用いられることが多いのに対し,本研究で想定するシステム同定法の利用法は,木造建物の適切な解析モデルの構築に利用する点にある.木造建物は荷重抵抗機構が複雑であり,接合部等の部分詳細のモデルを組み上げることにより全体架構モデルを構築しても,実態と対応しないことが多い.本研究の手法が確立すれば,木質構造の適切なモデル構築に資することが期待される.さらに本年度は,伝統的木造建物である木造多層塔を対象として,各層の振動を計測することで各層の減衰,剛性の物理パラメターを推定する手法を提案した.特に起振機を用いた強制加振実験を行った場合は,各層の質量も推定できることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,木質構造建物を想定したシステム同定法の理論構築を行った.前年度が線形モデルを対象とした手法の提案を行ったのに対し,本年度は非線型モデルへ拡張した手法を提案した.さらに,木造多層建物を想定した物理パラメター同定法を提案し,実測調査を行うことで提案手法の妥当性を検討した.以上のように,理論構築,実測による検証等も並行して進捗しており,おおむね研究は順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進については,これまでの理論展開およびシミュレーションや実測データを用いた検証で精度の問題が見られた点に関して原因を検討し,その改善を図ることを目的とする.そのために実験も行うことにより,提案手法の課題点について詳細に分析する計画である.
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