2013 Fiscal Year Research-status Report
高効率で安全な道路照明を設計する薄明視輝度計測ツールの開発
Project/Area Number |
25420607
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
明石 行生 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10456436)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 薄明視 / 順応輝度 / 錐体 / 桿体 / 測光システム / 道路照明 |
Research Abstract |
CIE薄明視測光システムの実用化のための課題である、順応輝度を定義するために実験を行った。具体的には、(1)反応時間を正確に測定できる実験装置を制作し、その実験装置を用いて、(2)光源の分光分布と視票の背景輝度を種々変化させた条件下で被験者が視票を検出する反応時間を測る実験を行った。 (1)実験装置の制作:実験装置は、視票提示装置、スイッチ、コンピュータ、照明装置から構成した。コンピュータにより、視票提示装置、スイッチ、照明装置を制御し、視票が提示されてから被験者がスイッチを押すまでの時間を反応時間として計測・記録できる。このときコンピュータ本体の時計を使うと正確な時間が測定できないために、今回、時計をコンピュータの外部に取り付けて反応時間を正確に測定できるように改良した。 (2)順応輝度を定義する実験:前述の実験装置を用いて、種々の照明条件下で被験者が視票を検出する実験を行った。今回、被験者が順応している輝度が局部的な輝度によるのか平均的な輝度によるのかを求めるために、円形の照射パターンを有するスポットライトを用いて変化させるという、独創的な手法を用いた。具体的には、まず、スポットライトにより前述のそれぞれの領域(半径5度の円)を照射した。この間、被験者の目は、局部的に高い背景輝度に順応していた。つぎに、スポットライトを消灯し、その0.2~0.8秒後に、いずれかの偏心角の位置に視票を1秒間提示し、被験者は、その視票を検出するや否やスイッチを押した。これにより、視票の条件を変えずに、局部的な順応だけを変化させることができた。実験の結果、周辺視票の検出の反応時間は、中心視野の輝度ではなく、周辺視野の視票近傍の輝度に影響を受けることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の目標は、反応時間が正確に測定できる実験装置の制作と順応輝度の定義を求める実験の実施であった。上述したように、これら2つの目標を達成したため、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。また、平成25年度の実験からは、反応時間は、視野全体の順応より視票近傍の局部的な順応に依存することがわかったが、そのことを結論づけるためには、追加実験が必要であるため、当初の計画を上回るものではないと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、(1)昨年度の順応輝度を定義するための追加実験を行うとともに、(2)薄明視測光システムの適用範囲を求めるために、視票を提示する視野位置(偏心角)のプルキンエ現象への影響を調べる実験を行う。 1)追加実験:平成25年度に実施した反応時間を求める実験では、視票のその背景に対する輝度コントラストを変えられなかったが、追加実験では視票の輝度コントラストを変える必要がある反面、時間的な精度は要求されないため、コンピュータとスクリーンを用いて視票を提示する。 2)視票位置の影響の実験:光源の分光分布と視票輝度が異なる実験条件下で視野の中心と周辺に7つの視票を提示し、それらの視票に対する被験者の反応時間を調べる。これまで、偏心角5度から15度程度までは、CIE薄明視測光システムが適用できるとの独自の仮説を立てている。この仮説を今回の実験により立証するとともに、偏心角5~15度以外の視野領域では、実験データに基づいて視野の偏心角ごとに補正を行うことにより、最終的に全視野対応型・薄明視測光システムを開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、反応時間を指標として実験を行なったために、視票の提示に対する被験者の反応時間を正確に測定することを優先して実験装置を組み立てて実験を行なった。実験の結果、視票検出には局部的な順応輝度が影響していることを見出した。しかし、周辺からの平均的な順応輝度の影響も無視できないため、さらなる実験には、背景に対する視票の輝度コントラストを変化させる必要があった。輝度コントラストを変化させるためには、視票の反射率を変える必要があった。そのため、反射率が種々異なる視票の制作を試みたが、軽量な視票に塗料を塗ると重量が増加するために、視票提示速度が著しく低下することがわかった。このため、今回開発した実験装置の延長上の検討では、輝度コントラストを変化できる適切な視票とその制作方法が見いだせなかったことが、予算が使いきれなかった理由である。 背景に対する視票の輝度コントラストを変化させるために、コンピュータスクリーンに視票を提示する実験を追加実験として行う。その際、反応時間を測定するのではなく、被験者が視票が見えるか見えないかの閾値となる輝度を求める実験を行う。そのために、輝度階調の高いスクリーンと視票を提示するためのグラフィックボードを購入する。この実験方法の導入により、平成25年度の反応時間に基づく実験と平成26年度の閾値輝度に基づく補足実験の結果を統合することにより、順応輝度をより正確に定義をすることができると期待できる。
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