2014 Fiscal Year Research-status Report
アジアの社会音響調査データアーカイブの設立とその二次分析への活用
Project/Area Number |
25420610
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
川井 敬二 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (90284744)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 隆 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (30109673)
太田 篤史 横浜国立大学, その他の研究科, 助教 (30343172)
森原 崇 石川工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10413767)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 建築環境工学 / 交通騒音 / データアーカイブ / 社会調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究計画として挙げた以下の3項目について、項目毎に実績を述べる。 1)データアーカイブを用いた二次分析に関して、研究発表の項で挙げるように、数多くの成果を本年度発表した。中でもICBEN2014(第11回公衆衛生問題としての騒音に関する国際会議)はこの研究分野において代表的な国際会議であり、本研究プロジェクトのメンバーを中心とする実行委員会により初のアジアでの開催(奈良)を実現し、世界を代表する研究者に対して本研究プロジェクトの成果を示すことができた。分析に関しては、データ分析を議論するための会合を本予算を活用して定期的に開催し、構造方程式モデルなど高度な多変量解析を用いて二次分析を進めた。 2)アーカイブの英語化について、平成25年度の英語ホームページの整備ののち、既存の日本のデータに関して調査カタログや調査票の英語化に取り組んだ。調査カタログは専門用語が多く翻訳業者による翻訳では不十分な点が見られたため、業者への外注は一部にとどめ、それを素材として本プロジェクトのメンバーにより翻訳を継続している。このため予算的には翻訳業者分の執行が少なく、その分を会合のための旅費の支出に充てた。データ収集に関しては、ベトナムの航空機騒音調査データを新たに収集できた。韓国と中国については研究者間での国際共同研究プロジェクトや学術交流を進めているが、データの受け入れは27年度に持ち越された。 3)アジア各国における交通騒音に関する暴露-反応関係の導出について、日本とベトナムにおける道路交通騒音による暴露-反応関係を分析し、国内外の会議で発表を行った。ベトナムについては5つの中~大都市の調査に基づくものであり、同じ騒音レベルに対して住民の不快感は日本や欧米よりも低いという結果であった。これは東南アジアでは初の暴露-反応関係の提示例といえるもので、重要な成果と考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要で述べたように、本年度の研究計画は1)国内データの二次分析、2)データアーカイブの英語化とアジアの調査データ収集、3)アジアにおける交通騒音の影響に関する暴露-反応関係の導出の3項目である。このうち、大きな成果を得たのは国内データの二次分析、ベトナムにおける調査データの収集および暴露-反応関係の導出である。これらはICBEN2014、Inter-Noise2014という有力な国際会議で提示しており、本研究プロジェクトによりわが国で構築したデータアーカイブSASDAの存在意義を周知できる大きな成果が得られたものと考えている。一方で、データアーカイブの英語化については、25年度のホームページ開設につづく調査カタログの翻訳が大部分終了したものの完了していない。データ収集についてはベトナムでの社会調査データを収集できた一方で、韓国・中国での調査データ収集は27年度に持ち越された。日韓の共同研究プロジェクトや中国大連大学との学術交流など研究的協同への取り組みを平行して進めており、これを足がかりに早期の収集を図っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度の研究計画は次の2つの項目から成る。 1)アジアの社会音響調査データアーカイブの継続的運用に向けた体勢づくり: データアーカイブの英語化について残された作業を早期に終了し、平行して韓国・中国からのデータを受け入れる。成果発表や研究交流を通じてデータアーカイブの有用性と利用法について情報を発信し、今後のデータ提供と二次利用の促進を図る。 2)データアーカイブを用いた二次分析: 分析においては、26年度に成果を発表した騒音の不快感に関する暴露-反応関係やそれに影響する諸要因の検討を進展させ、構造方程式モデルを含む多変量解析により、不快感や妨害感の構造を明らかにする。こうした多変量解析の手法の有用性については騒音影響評価の研究領域でも十分に議論されておらず、本研究プロジェクトによるその明示が期待される。 以上、本研究プロジェクトで当初に掲げた2つの目標について、十分な成果を得ることが本年度の計画である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額は主に「その他の経費」の分である。これはデータアーカイブの英語化に伴う翻訳業者への経費のために計上していたが、翻訳対象のうち調査カタログは専門用語が多く、翻訳業者による翻訳では不十分な点が見られた。そのため調査カタログに関しては業者への外注は一部にとどめ、それを素材として本プロジェクトのメンバーにより翻訳を継続している。このため予算的には翻訳業者分の執行が少なく、残額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
26年度に生じた次年度使用額については、大部分を調査カタログの未翻訳部分を合議するための旅費、韓国のデータ収集のための打ち合わせ旅費として、また一部翻訳業者に外注可能なものをその他の経費として、27年度請求の助成金と合わせて使用することを計画している。
|