2014 Fiscal Year Research-status Report
デンマークとの比較による高齢者住宅の適正な居住水準に関する研究
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25420631
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
小川 正光 愛知教育大学, 教育学部, 名誉教授 (80126929)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高齢者 / 住宅 / 居住水準 / デンマーク |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者向けに計画されたバリアフリー住宅で、見守り・安否確認などの生活サービスを備えた「サービス付き高齢者向け住宅」を対象に、住宅の登録内容をデータとして分析し、住宅規模の分布と規模決定要因に関する分析を行った。データが大量となるため、本年度は、わが国の平均的数値を示す愛知県について実施した。 データは、「財)すまいまちづくりセンター連合会」が公開する住宅情報提供システムにより、愛知県内で平成26年11月までに供給された176団地(5986戸)を採取した。分析項目は、竣工時、階数、住戸規模、設備、生活サービス内容、家賃・サービス料等である。この内、平面構成については、46団地(82タイプ)を収集・分析した。 立地については、高齢者の人口規模と対応した供給が行われる関係にあるが、特定の株式会社が集中的に供給する地区があることが注目された。建物は、10階を超えるものが大都市で供給されているものの、3階を中心とした低層で、団地当り30戸未満が一般的で、安心感を持たせていた。 住戸規模は、18~20㎡が60%以上を占め、台所・浴室を共用するワンルームの構成である。制度としての下限である25㎡を超える住戸は2割余しかない。この規模段階になり、住戸内に台所・浴室を確保した1LDKが形成されている。したがって、実際に供給されているのは、設備を共用する居住施設と同様な生活空間であり、独立して落ち着いて生活できる住宅にはなっていない実態が明らかにされた。一方で、40㎡を超えた住戸も供給され、安全性を考慮した、ゆとりを持たせた平面計画が注目された。 生活サービスの提供は、見守り・安否確認は全団地で実施され、食事提供の比率も高かった。入浴・食事の介助や調理・洗濯の介助の実施率は約半数で、高齢になってからの継続居住には不安が感じられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サービス付き高齢者向け住宅における住戸規模と予想される生活内容に関する分析は、データ数が多くなるため愛知県に限定して行ったが、愛知県は大都市から過疎地までを含んでいるため、この制度による住宅内容のメカニズムは把握されていると考えられる。分析の結果、小規模な住戸が供給されたいる実態を明らかにできた。また、住戸規模が拡大すると設備内容が充実し、住宅に近づいて行くことが段階的に把握された。 以上のような成果から、この住宅タイプについての実態を把握することができ、住戸規模段階別の設備内容と生活内容を明らかにでき、本研究の目的を達成しつつあると判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
わが国におけるサービス付き高齢者向け住宅の供給実態においても、少数ではあるものの40㎡以上の住宅がみられた。この実態をふまえ、平成27年度には、デンマークの高齢者向け住宅の住戸規模と平面構成の実態調査を行う。調査対象は、コペンハーゲン市内の新規に供給された団地を計画している。調査時には、住戸平面の収集ばかりでなく、家具配置や住み方の様子についても採取し、高齢者の生活内容に対応した構成となり、そのためには、ほぼ40㎡以上確保する必要があることを実証する。その調査結果を、平成25年度に把握した、わが国の高齢者が居住する一般戸建て住宅の規模、平成26年に検討したサービス付き高齢者向け住宅の規模と比較し、デンマークにおける規模は前者と近く、後者の住戸規模は狭小で、改善が必要であることを考察する。
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Causes of Carryover |
「謝金」の費目について使用していない部分がある。アルバイトを依頼した調査データの分析作業に関しては、「謝金」を活用して順調に行い、成果を上げられた。しかし、デンマークの高齢者住宅状況に関して入手したデンマーク語の文献と資料を、コペンハーゲン在住の日本人に翻訳を依頼していたが、本人の体調が急に悪くなったため作業が遅れ、平成26年度には完了しなかったため、支出できなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
デンマーク語の文献と資料の翻訳が遅れている「謝金」の使用に関しては、他のデンマーク在住の日本人に依頼して、早急に作業を進める計画を立てている。その成果は、平成27年度のデンマークにおける調査実施の基本的なデータとして生かしていく。また、近年円安傾向にあるため、海外における調査に計画時より多くの費用を必要とするようになってきている。このような状況を踏まえ、平成27年度に実施するデンマークの高齢者住宅を対象とした調査旅費に追加して使用する。
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