2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本とスウェーデンの保育士の心身疲労から見た持続可能な保育環境の質の建築学的研究
Project/Area Number |
25420649
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
田中 千歳 国士舘大学, 理工学部, 教授 (30346332)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スウェーデン / 疲労 / 保育環境の質 / 子育て支援 / 国際比較研究 / 持続可能 / アクティグラフ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、我が国の少子化時代に対応した、人口減少化の動向に立ち向か得る、快適・安全・安心な保育環境の質に関する環境整備条件を導き出すことを目的とする。そのために本年度は、昨年度までの研究成果を踏まえ、これまでの総合分析と調査対象者へのフォローアップ調査、及び研究のまとめを行った。結果は、以下の通りである。 ①保育園と幼稚園での保育士におけるアクティグラフ調査を通し、覚醒時の活動量が一定時間低くなる状態が認められず、常に活動している。②同アンケート調査でも、勤務時間が9時間を超えるものも過半数を占め、休憩に行った形跡が認められない。③これは、休憩場所がないことや、休憩時での園児の怪我等への心配、他の保育士への遠慮等によるものであった。④アンケート調査で、身体的負担が最も多い場所は保育室であり、精神的負担が最も多い場所は職員室である。⑤待機児童の軽減に期待のかかる家庭福祉員では、待機児童数の多い0~3歳児を対象とした自宅開放保育であり、他職員もなく業務ができるメリットがある。⑦家庭福祉員は、少人数のメリットを活かしきめ細かな保育が可能となる一方、公私空間の混同や福祉員の同居人にも負担がある。⑧アクティグラフ解析の結果、日本の家庭福祉員は、1日のうち11時間以上を仕事に費やしており、自分の時間をほとんど持っていない⑨スウェーデンの場合は8時間程度の業務で、業務中の体動に大きな変化がなく、活動量も少ない。 このように、我国の保育士や幼稚園教諭は、業務中、常に活動しており休憩がとれず、心身ともに疲労につながっていることが常態化しつつある。このため、少しでも休める環境が求められることから、就学前保育環境は、子供たちに留意しながらも常時体動するのではなく、子供の「気配」を感じることのできる空間環境であれば、保育士の活動量やひいては心身疲労の軽減に結びつくものと考える。
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