2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25420655
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
市岡 綾子 日本大学, 工学部, 講師 (90343574)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 土蔵 / 赤瓦 / 景観色 / 生活景 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の福島県須賀川市では,甚大な被害を受け再建を目指していた主要な公共建築の設計が行われ,まちなかにおける復興の姿が概ね一般市民にも明らかになった。民間レベルでの再建も一時期よりは落ち着きを取り戻し,復興に向けた第一段階が安定期に入った様相を見せている。公共建物の解体が終わり,まちなかに大きな空き地ができた状況は賑わいを失ったようにも感じられる一方で,今後新たな住民の流入や商店街への出店者進出を受け入れることで,まちの再生を果たす将来に向けたターニングポイントにあるともいえる。 そこで,復興まちづくりが次の段階へと移る過渡期となったことを受け,今年度は研究計画の見直しが必要となり,その結果,アンケート調査だけではなく聞き取り調査も並行して行うこととした。アンケート調査で定量的な分析を試みる一方,住民の復興まちづくりに対する考え方は,震災直後よりも多岐にわたることが予想されるため,様々な住民属性を抽出し,次世代に継承すべきまちの愛着に着目しながら,歴史的なまち資源の捉え方や生活景等について聞き取り調査の実施を予定している。須賀川産赤瓦をイメージする景観色を意識した改築・修景事例についても,継続して行い,景観色の測定やそのデザイン手法について分析を行うものである。平成27年度は,震災後4年を経て,公共施設の再建を中心とした復興が,まちなかを中心に着実な歩みとして行われている中で,歴史的なまち資源をどのように継承,または活用すべきかを検討する所存である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現存する土蔵の現況確認,また既に解体されてしまった土蔵に関する情報収集の結果から,土蔵を活用したまちなかにおける生業が明らかとなり,住民の地域に対する愛着となりうる歴史的なまち資源の存在が重要であると再確認できた。江戸時代からの「あきんどのまち」として知られていた須賀川市のまちなかにおいて,酒や醤油の醸造蔵や繭蔵など,ものづくりの生産拠点としての蔵が数多く存在し,作業空間として比較的広い空間を有していた蔵を震災直前まで活用していた事例を確認することができた。内部空間が広い土蔵は,躯体部分が頑丈なだけに簡易な改修によって現代の要望に合わせた空間へと転用することも可能であり,まちなかにおける有益なストック空間として機能したと推察される。実際に生活行為が行われていた座敷蔵は,作業用の蔵に比べると事例が少ないことが確認できた。このことは須賀川の歴史的なまち資源を検討するうえで重要な特性と考えられる。歴史的なまち資源として土蔵の現在は姿がなくても以前はそこに存在していた,建築物の価値や生業を支える空間構成を,現在に継承し語り継ぐ仕組みづくりこそが,歴史的なまち資源を活用する手法だと考えられる。 昨年度は,計画作成時に予定していたアンケート調査の実施内容等,研究計画の見直しが必要となり,その検討に時間をかけたため,住民を対象とした景観色や生活景に関するアンケート調査を実施することができなかった。ただし今年度は見直しを行ったため,順調に研究計画が進むことになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,須賀川市住民に対するアンケート調査または聞き取り調査を早急に実施するとともに,歴史的なまち資源を活用したまちづくりのあり方を検討する所存である。景観構成要素であった赤瓦の色彩を意識して改築された建造物等を事例として抽出し,景観色の色彩測定を行うと同時に,景観に対する配慮事項に関する考察と分析を行い,震災復興のまちづくりにおける景観の継承に関する知見を得たいと考えている。 アンケート調査によって定量的な分析を試みる一方,住民の復興まちづくりに対する考え方は,震災直後よりも多岐にわたることが予想されるため,様々な住民属性を抽出し,次世代に継承すべきまちの愛着に着目しながら,歴史的なまち資源の捉え方や生活景等について聞き取り調査の実施を計画している。須賀川産赤瓦をイメージする景観色を意識した改築・修景事例についても,継続して行い,景観色の測定やそのデザイン手法について分析を行うものである。歴史的なまち資源を再現するだけではなく,住民の記憶に残り,また来街者にも分かりやすく伝わり共有できる仕組みを考えていく所存である。 とりわけ福島県においては,住み続けたいと思う地域への愛着を次世代まで継承させることが重要な課題であることから,地域のアイデンティティに直接結びつく歴史的なまちの資源を活用したまちづくりを実践し,持続可能な仕組みとすることが求められている。持続可能なまちとして,まちに対する愛着を育む環境とするシステムのモデル化を試みる所存である。
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Causes of Carryover |
研究計画作成時に予定していた,住民を対象としたアンケート調査の実施内容等,研究の見直しが必要となり検討に時間をかけたため,研究経費の執行については少額となってしまった。ただし,見直しを行ったことで,平成27年度は順調に研究計画が進むことになっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アンケート調査の規模を見直し,復興まちづくりに関する住民の意向も加え,地域への愛着を次世代まで継承させうる歴史的なまち資源をアンケート調査から抽出し,その分析を行う。アンケート調査だけでは抽出しきれないことが予想される生活景は,聞き取り調査を実施し,丁寧なトレースを行うこととする。 また,景観構成要素として住民の記憶に残る,須賀川産赤瓦の色彩を意識して改築・改修された須賀川市内の建築物の事例収集を行い,その景観色を測定・分析し,復興まちづくりに継承すべきデザインの要素を見出す所存である。
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Research Products
(2 results)