2013 Fiscal Year Research-status Report
スペイン植民都市図が示す「都市計画」の近代性に関する研究
Project/Area Number |
25420661
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
加嶋 章博 摂南大学, 理工学部, 准教授 (80390144)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スペイン / 近世史 / 地域研究 / 植民都市 / 都市計画図 / 広場 / 街区 / インディアス法 |
Research Abstract |
今年度実績は、スペイン国立インディアス古文書館の地図・都市図部門が所蔵する植民地時代の史料のうち、都市図等の視覚的資料ならびに都市建設に関わる規範文書や指示書等を選出し、スペイン植民地時代の「都市計画」がどのような行為として捉えられていたかを検討するための関連要素を抽出した。 イメージ資料については、スペイン植民地の統治地域区分中メキシコ部門を中心に、都市を描いた史料や都市計画を示す史料を閲覧し選定した。これらの都市図選定作業においては、都市図資料を都市一般図や都市計画図に分類した既往研究の知見も参照しながら、都市の現況を示す都市一般図、都市計画図、都市の立地条件を示すもの、道路や都市施設の位置情報を示す図、都市の作図法を示す図、図の凡例等を示した資料を抽出した。 選定した都市図に関しては、都市図の標題、作成年、都市図の大きさ、都市図が示す内容および目的、縮尺、都市図に記載された教会堂や公共施設等の建築物、広場、空地利用、城壁の有無、描画色等についての情報を抽出し、スペイン植民統治期における都市図データとして蓄積した。 また都市建設に関わる規範文書および指示書については、土地の区分方法や規模に関する情報を示すものを抽出した。これらの文書からは、農地、放牧地、宅地など土地の種類によっては、一般的な区画規模があったことが読み取れた。宅地に関しては、街区のスケールについて一般的に利用される長さ単位が統一されていく傾向が読み取れたとともに、街区の区画規模について一定の規模を促す傾向が規範の変遷から読み取れた。 考察の成果は、以下の査読論文で公表し、2013(平成25)年 日本都市計画学会 年間優秀論文賞を受賞した。 ・加嶋章博、「スペイン植民地法に見られる植民初期の都市計画の尺度に関する試論」『都市計画論文集 No.48, No.3』、日本都市計画学会、2013年、pp.219-224.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スペイン植民地において、都市計画がどのような行為として捉えられていたのかを明らかにするために、主たる分析対象として都市計画図等の都市を描いた視覚的資料を整理した。これに加えて、都市建設に関わる規範文書や指示書等に見られるテクストの変遷を追うことで、都市計画的行為の特徴や傾向が読み取れた。イメージとテクストの両方の資料抽出と考察の重要性をより強く認識した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、インディアス古文書館の地図・都市図部門のメキシコ・セクションにおける都市計画図や関係する規範や指示書について、(1)都市空間や都市そのものがどのように描画されているか、(2)どのような都市施設がどのように配置されているか、(3)道路や街区の構成パターンがどのように計画・表現されているか、(4)都市はどのような縮尺で表現されているか、(5)どのような地理的条件や都市の立地条件が表現されているか、といった特性に着目し、都市計画の対象について整理する。また都市イメージ資料の諸要素を抽出した都市図カルテのデータベースから、共通する項目や要素に着目しながら、「都市計画」がどのような表現要素や表現行為から成り立っているかを考察する。 またブエノスアイレス・セクションについても、都市図等の選定作業、および、都市の表現要素を整理した都市図のデータ化作業を進める。ここでも、都市内と都市外の描画内容、都市核の空間要素、道路・街区・河川等の構成要素、都市広場や都市施設、また縮尺や色使い等の表現形式等の抽出作業を継続する。 メキシコ・セクション、アルゼンチン・セクションにおけるスペイン植民都市の都市図に見られる特性の傾向と分析結果を比較し、都市図を構成する視覚的要素の共通性や、都市計画的行為と見なせる要素の共通性の検討を通して、「都市計画」的行為の役割は何であったか、何を計画し、何を表現する行為だと捉えられていたのかを考察する。これらから得られる知見をもとに、近代都市計画との連続性や不連続性についても整理する。視覚的資料のみではなく、規範や指示書等の文言を分析の対象として広げ、イメージとテクストの比較考察作業が必要である。
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Research Products
(4 results)