2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25420665
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
飛ケ谷 潤一郎 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30502744)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 南イタリア / ルネサンス / 聖堂ファサード / 開口部装飾 / 回廊中庭 |
Research Abstract |
平成25年度の科研費の成果としては、まず〔学会発表〕からみていくと、9月に北海道大学で行われた日本建築学会の大会における下記の発表が挙げられる。この発表では、15・16世紀に南イタリアを支配していたスペイン(イベリア半島)との関係を調べるにあたって、中世以降度重なる増改築をくり返したトマールのクリスト修道院を例として取り上げ、その大回廊立面に見られるセルリオの建築書の影響について論じた。またセルリオについては、「セルリオの建築書『第四書』の集中式聖堂(cc. 57v, 58r)について」と題する原稿を執筆し、今年9月に神戸大学で行われる日本建築学会大会で発表するために投稿した。 次に〔雑誌論文〕については、『空間史学叢書1』に収められた下記の論文が挙げられる。この論文は編集委員会から依頼された研究発表をもとにしているが、刊行にあたっては審査員による査読の後に採用されたものである。この論文では、アルベルティの『建築論』に登場する「スパティウム」という用語が、現在の「空間」という意味よりも平面的な「あいだ」としてしばしば使用されていることを明らかにしたもので、実際にイタリアではルネサンス建築のみならず中世建築について見ても、内部と外部が一致していない例が多い。 なお〔図書〕については、加藤磨珠枝編『教皇庁の美術』に掲載予定の「祝福のロッジアの形態の変遷について」を執筆し、校正待ちの段階である。教皇が祝福を与えるロッジアは、中世末期の教皇宮殿に登場してから、ルネサンス以降は大聖堂ファサードに設置され、巨大化していった理由として、古代ローマのコロッセウムなどの影響を明らかにしたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年9月におよそ2週間で、カラーブリア地方とバシリカータ地方の現地調査を実施した。これらの地方の主要な都市はすでに訪れたことがあるため、今回は公共の交通機関ではアクセスが難しいものを中心にレンタカーで訪れた。遺構は広範囲に点在しているために多くの移動時間を費やすことになったが、修復中で見学不可の建物はなかったため、ほぼ予定通りに実施することができた。また事前の文献調査が不十分であったためでもあるが、現地ではスティロのラ・カットーリカ聖堂に類似する平面形式のビザンティン聖堂をいくつか発見できたのは幸いであった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は2011年の震災後に移転した研究室の引っ越しが9月に予定されていて、研究に費やせる時間が激減するため、当初予定していたシチリア島よりも研究対象の少ないサルデーニャ島の調査を先に行い、シチリア島の調査は次年度に変更する。サルデーニャ島では、中世末期からスペインのアラゴン家がピサ共和国に取って代わったことによる影響が、ルネサンス建築にもはっきりと現れている。それゆえ、中世海洋都市史にくわしく、現地調査の経験も豊富な法政大学陣内秀信教授から情報収集をするとともに、建築史関係の文献についてもしっかりと下調べを行ってから調査に臨むつもりである。
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