2014 Fiscal Year Research-status Report
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25420665
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
飛ケ谷 潤一郎 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30502744)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 南イタリア / ルネサンス / 聖堂ファサード / 開口部装飾 / 回廊中庭 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26 年度の科研費の成果としては、まず〔学会発表〕からみていくと、9月に神戸大学で行われた日本建築学会の大会における下記の発表が挙げられる。この発表では、南イタリアの集中式聖堂との関係を調べるにあたって、当時南イタリアを支配していたスペインはもとより、ヨーロッパ各国に知られていたセルリオの建築書『第四書』を例として取り上げ、おもに集中式聖堂の立面構成について論じた。またセルリオについては、「セルリオの建築書『第四書』のヴェネツィア風パラッツォ(cc. 34v, 35r)について」と題する原稿を執筆し、今年9月に東海大学で行われる日本建築学会大会で発表するために投稿した。 次に〔図書〕については、ヴァザーリ『美術家列伝』第3巻所収の「ブラマンテ伝」、「ジュリアーノ・ダ・サンガッロとアントニオ・ダ・サンガッロ伝」、「クローナカ伝」、そして「ペルッツィ伝」の翻訳と解題を担当した。これらの盛期ルネサンスの建築家のうちで、とりわけジュリアーノ・ダ・サンガッロとペルッツィについては、ナポリに限定はされるものの、ポッジョレアーレのヴィッラとも関係している。 同じく〔図書〕については、加藤磨珠枝編『教皇庁の美術』に掲載予定の「祝福のロッジアの形態の変遷について」を執筆し、初校を提出した段階である。教皇が祝福を与えるロッジアは、中世末期の教皇宮殿に登場してから、ルネサンス以降は大聖堂ファサードに設置され、巨大化していった理由として、古代ローマのコロッセウムなどの影響を明らかにしたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26 年6月におよそ2週間かけて、サルデーニャ地方の現地調査を実施した。この地方を訪れたのは今回がはじめてであったが、研究の対象とする建築が集中している都市はサッサリなどの少数に限られていて、大半は公共の交通機関ではアクセスが難しい郊外にあるため、レンタカーで訪れた。遺構は広範囲に点在しているために多くの移動時間を費やすことになったが、修復中で見学不可の建物はなかったため、ほぼ予定通りに実施することができた。なお、文献調査についてはローマの大学や研究所の図書館で資料を収集したところ、サルデーニャのルネサンス建築に関する研究は個別の事例研究にとどまっているものが多く、総合的な特徴について論じられた研究は少なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、当初予定していたシチリア島よりも研究対象の少ないサルデーニャ島の調査を先に行ったため、今年度はシチリア島を対象とする。シチリア島の主要な都市であるパレルモやシラクーザなどには一度訪れたことがあるが、今回は中世との関係に加えて、ルネサンスからバロックへの変遷についても検討したいと考えている。というのも、南イタリアでは17世紀の地震による影響もあり、中世からいきなりバロックへと移行してしまったような町並みが見られるからであるが、そのためには単体の建築のみならず、都市との関係についても配慮しながら調査を進める必要がある。
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