2014 Fiscal Year Research-status Report
インド・アジャンター後期石窟寺院の建築構成に関する研究
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25420666
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
矢口 直道 金沢大学, 人間科学系, 准教授 (00342048)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 仏教石窟 / インド / マハーラーシュトラ / アジャンター / 柱頭装飾 / 扉口装飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年8月から9月にかけて、インド・マハーラーシュトラ州にて現地調査を実施した。 アジャンター石窟では、柱の装飾について、柱頭の彫刻装飾と柱身の彫刻及び絵画的装飾について調査した。残念ながら写真に記録することはできなかったが、第1、2、16、17、26窟の柱装飾で左右対称性の観点から興味深い差異が認められた。これらは石窟寺院の開窟が行われた過程と大きく関わっていると考えられる。つまり、石窟は現在の建築工事ように作業で業務分担されているのではなく、作業場所によって分担されており、工事、装飾の担当者の差異が表れている。石窟の右側と左側で同じ行程を異なる工人集団が作業を行っていたと想定できるのである。この点を中心に、発表する準備を進めている。 アジャンター石窟に加え、エローラ石窟、カンヘリー石窟、エレファンタ石窟にて写真撮影による詳細なデータ取得を行った。アジャンターとの関連性では、課題の建築構成についておもに調査を行った。エローラ石窟は、石窟相互の間隔が広くとられているためにアジャンターのような隣り合う石窟間での僧坊などの位置調整は見られないが、主に壁面装飾に左右非対称のものが見られた。カンヘリー石窟は、小規模なヴィハーラ窟が中心で、装飾が残る石窟では、当初の開窟者とは異なる人々によって彫られた彫刻が多く、これらは非対称に配置されていた。アジャンター石窟と、関連する石窟の比較検討を行い、発表の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2014年8月から9月にかけて実施したアジャンター石窟の現地調査では、2014年6月から調査日程に併せて現地調査申請していたが、アジャンター石窟を管理するインド考古局アウランガバード支所の所長交代人事で、所長不在の期間が9月以降まで続き、調査許可が間に合わず、写真撮影、レーザー距離計による実測調査を十分行うことができなかった。 これに伴い当初の予定を変更し、アジャンター石窟以外の関連する石窟寺院を調査した。エローラ石窟、カンヘリー石窟の仏教石窟を中心に、エレファンタ石窟を調査した。アジャンターとの関連性を中心とした調査で、それぞれの石窟について網羅的に調査を行ったわけではない。 2015年度に行うアジャンター石窟の調査と併せて、成果を発表するが、アジャンター石窟の調査研究の達成度は、上記の理由で、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、アジャンター後期石窟群の柱と天井装飾について調査、記録を行い、その結果を分析する。特に昨年度分の再調査データの取得に際し、同様の失敗を繰り返さないよう器材の取り扱いに細心の注意を払うと共に、助手の訓練期間をとって、できる限りの調査環境を整える。
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Causes of Carryover |
アジャンター石窟の調査が、調査受け入れ機関の事情で十分できなかったため、調査内容を変更した。そのため予定していた調査分の費用が未使用となっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した費用は、本年度の調査内容を次年度に行う費用として充てる。また調査内容を一部変更したことにより、当初計画以外の視点についての調査が実行できたため、その視点からの考察も進めて、成果発表を行う。この成果発表にも繰り越し費用を充てる。
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