2015 Fiscal Year Annual Research Report
インド・アジャンター後期石窟寺院の建築構成に関する研究
Project/Area Number |
25420666
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
矢口 直道 金沢大学, 人間科学系, 准教授 (00342048)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アジャンター / 石窟寺院 / 左右対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、インド・アジャンター石窟群について、石窟造営の様相と石窟群の開窟過程を特に以下に示す3点の建築技術的観点から明らかにした。 (1)僧坊の配置とその扉の取り付け方:開窟当初、扉口には扉が取り付けられていたが、扉は4種類の取り付け方で設置されていた。これらの取り付け方は、規則性がなく無作為に用いられているように見える。つまり、それぞれの石窟で一定に取り付け方が用いられているわけではなく、アジャンター全体を通して4種類の取り付け方が偏在し、一つの石窟内の僧房に2種類ないし3種類の取り付け方で扉がつけられている。これらを系統的に分類、整理すると、建築的技術の観点から、単純な技術の進歩は石窟群全体で共有されており、技術的に石窟群は同時期に造営が進んでいたことが分かる。 (2)柱の配置と装飾:アジャンター石窟群の柱は複合的な装飾が施されているが、単純な装飾要素から複雑な要素までが一度に描かれている。ひとつの石窟に限ってみると、構築された柱を元に壁龕等の柱の装飾がなされ、壁画にも描かれたとみるのが妥当である。 (3)壁面、天井の建築的装飾:アジャンター石窟群の造営時期を考えると、天井が立体的に表現することが計画され、実際にそうされていた時期と、天井画で代替された時期、もともと天井画で表現するように計画された時期があったものと考えることができる。壁面の彫刻、絵画の研究からも同様の指摘が見られるが、建築表現を分析することによっても建築造営に対する態度の差異に言及することができる。 以上の考察に加えて、細部の完成度の違いから、アジャンター石窟群の建築に見られる左右非対称性は、プログラム上生じたものなのか、個人の裁量によるものなのかを理解することができる。アジャンター石窟群は、石窟群全体が、互いに影響を及ぼして、短期間に造営されたものと考えることができる。
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