2016 Fiscal Year Research-status Report
濃尾地震などの大規模地震による建築被害とその影響に関する建築史的研究
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25420667
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西澤 泰彦 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80242915)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 建物被害 / 濃尾地震 / 庄内地震 / 耐震化 / 震災予防調査会 / 筋違 / 土台 / タイバー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、研究の第3段階として、大規模地震の後に提案された耐震化方法の把握について、平成25~27年どの研究で明らかになったことを基に、耐震化方法の詳細な把握、耐震化方法の継続性の把握に努めた。 その結果、次のことが判明した。 1点目、濃尾地震より前に起きた地震において、地震学者によって、建築被害の把握とそれに応じた耐震化の提案がなされていた。2点目、濃尾地震後、震災予防調査会が提案した木造建物の耐震化は、基礎・土台・柱の緊結、柱と梁・桁の緊結、という方法で軸部の強化を図ったものであり、これは、日本木造軸組造建築で伝統的におこなわれてきた軸部の強化と思想的には類似している。3点目、上記2点目に連動して、伝統的にはおこなわれてこなかったこととして、軸部の強化に金属の補強材を用いたこと、筋違をいれて軸組の変更を防いだことであった。4点目、官庁集中計画などのために来日したドイツ人建築家エンデとベックマンによって、濃尾地震直後に建てられた司法省本館にはドイツ小屋という木造の特殊な小屋組みが使われた。これは、その後、明治時代のみならず、大正時代、昭和戦前を経て、戦後の戦災復旧工事でも使われたことを冠アすると、これも耐震的であった。5点目、庄内地震後、鉄製のタイバーを挿入して軸組を補強する手法が提案され、実際に使われた。 これらのうち、基礎・土台・柱、柱・梁桁の緊結は、その後、今日に至るまで多用され、定着したが、鉄製のタイバーを用いる方法は、1920年代、1930年代の建物にも見られるものの、前者に比べれば普及の度合いは低い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度から継続しておこなってきた大規模地震に関する文献調査は平成27年度で概ね終了し、その成果を受けて、平成28年度は補足的調査を進めた。その結果、具体的な耐震化について、1)基礎・土台・柱の緊結、柱と梁・桁の緊結、という方法で軸部の強化を図ったこと、2)濃尾地震直後に起工した旧司法省本館庁舎にはドイツ小屋と呼ばれる小屋組が使われ、それが普及したこと、の2点が判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、継続してきた研究期間の最終年度であり、これまでに把握した耐震化方法の体系化をおこない、「明治時代後半に提案された耐震化方法の体系図」を作成する予定である。また、研究成果を学術論文にまとめ公表していく予定である。なお、必要に応じて、文献調査の補足調査、さらに、関東段震災に至る時期の動向に関する調査を加え、明治時代に確立した多々者耐震化の方法について、位置づけをおこなう。
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Research Products
(4 results)