2014 Fiscal Year Research-status Report
メッセネの劇場のスカエナエ・フロンス―建築装飾の様式分析とその建築史的位置づけ
Project/Area Number |
25420672
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉武 隆一 熊本大学, 大学院先導機構, 准教授 (70407203)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ギリシア / ローマ / 劇場 / スカエナエ・フロンス / 建築装飾 / 様式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ギリシアのメッセネ遺跡のローマ劇場のスカエナエ・フロンスについて、建築装飾の様式分析を通して建築史的位置づけを明らかにすることである。H25年度までの研究で当該スカエナエ・フロンスが後1世紀後半の建造であり、より厳密にはクラウディウス帝の頃からヴェスパシアヌス帝の頃にかけて、つまり67~79年頃と考えられることを明らかにした。H26年度は、比較対象をトルコ西岸の小アジア地方のローマ建築まで比較対象を広げ、関連文献の収集を行い、また資料が不足する遺跡で現地視察を行うなどして資料の収集に努めた。ギリシアと小アジアで1世紀に建造されたローマ建築は、コンセプトはローマ風であっても、建築装飾の観点から見れば、ギリシアや小アジアのヘレニズムの伝統の強い影響下にあった。得られた資料の中から、柱頭に焦点を当てて分析したところ、メッセネのローマ劇場のロータス・アカンサス式柱頭はいわゆる葉茎柱頭(leaf capital)の中のロータス式柱頭の系統に属し、とくにロータス・アカンサス式柱頭は1世紀後半のギリシア本土で流行した装飾要素であることが判明した。ただし、ギリシア本土と小アジアでは流行した時期やそのモチーフが若干異なることから、さらに詳しい検証が必要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度はトルコの小アジア地方に対象を広げて研究を進めた。大規模な都市遺跡が残るこの地域の発掘報告と研究成果はまだ十分に公開されているとはいえず、またヨーロッパでも資料の収集が困難なものもあるが、現在までのところ研究に不足しないだけの基礎資料を集めることが出来ている。またH26年度の分析では、ロータス・アカンサス式柱頭を含む葉茎柱頭の発展過程を明らかにしたことで、まだ部分的ながら一応の結果が出ている。今後ほかの建築要素の分析にも対象を広げて、メッセネのローマ劇場のスカエナエ・フロンスの史的位置づけを考察することが十分に可能であると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
従来の計画では、H27年度はイタリア半島にまで比較対象を広げる予定であったが、トルコの小アジアとギリシア本土を含めた比較分析には、まだ資料を読み込み、不足する分については現地で確認を行う必要がある。したがって、H27年度の研究ではトルコを対象とする比較研究を継続することによって、研究を推進させる。
|