2013 Fiscal Year Research-status Report
架構と意匠からみた地方の建築における「洋風」の浸透と持続ー濃尾地方を事例としてー
Project/Area Number |
25420675
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
溝口 正人 名古屋市立大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (20262876)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 洋風建築 / 木造 / 濃尾地方 / 近代 / 銀行建築 / 架構 / 意匠 |
Research Abstract |
建築文化における「洋風」の地域的な浸透と持続を把握するケーススタディとして、分析対象は濃尾地方における濃尾震災後の木造洋風建築としている。意匠に関してはファサードを主な分析対象とし、各部の寸法、装飾の整理を行ない、架構は主に小屋組を分析した。以下ふたつの方法でデータの収集、整理を行なった。 ア)濃尾地方の現存遺構の事例収集 洋風建築の現存遺構として本年度に具体的に詳細な実測を行ったのは、旧伊深村役場(美濃加茂市)、旧十六銀行太田支店(美濃加茂市)、旧加茂郡銀行羽黒支店(犬山市)の3例である。特に分析で注目すべき事例は、今回の調査で昭和6年(1931)建造であることが判明した旧伊深村役場である。玄関を中心に左右対称な構成をとり、外壁は西洋下見板張り、左右翼部分妻壁は竪板張り、玄関ポーチ柱は上半部を丸柱、足元は八角形とする。このように意匠の基調は洋風の木造建築の典型といえる一方で、玄関ポーチ屋根は切妻起り屋根、柱頭には直線的な形状ながら舟肘木を入れ、柱を繋いで長押を回す点で和風の構成で、和洋折衷の意匠を採用する点が特徴といえる。このような和洋折衷的な特徴は小屋組にもみられ、三重梁の和小屋ではあるが屋根勾配は30°で組む。さらに平面の柱間寸法は、土間であった前面2間分を真々6尺、以外を真々6尺2寸で計画されており、畳割を想定した寸法体系が多くで採用されている。意匠における「洋風」と架構における「伝統和風」の共存が昭和初期で確認できた。 イ)画像資料の把握収集 外観の意匠に関しては、現存しない事例の古写真の悉皆的な収集に努めた。『愛知県写真帖』(愛知県協賛会編、明治43年3月発行)および『尾北写真画帖』(正木貞弌編、大正元年12月発行)に掲載される銀行建築14例の外観の形態と意匠の分析を行い、塗籠造を採用する銀行建築は大正時代に至るまで確認できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
旧伊深村役場の調査・分析によって、昭和初期の洋風の浸透と理解、和洋折衷の様相が把握できた点は、洋風意匠がどこまで命脈を保ち、どの部分で有効であったのかといった具体相を理解する上で有用な成果であった。一方で、明治中期の事例として調査を予定していた遺構が諸般の事情で取り壊しとなったため、時代的な上限の様相の理解で十分な成果を得ることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は以下の二点で研究を深める。 1)現存遺構の寸法体系、比例関係の分析 実測調査を引き続き実施するとともに、両年度に収集した現存遺構の事例について、各部寸法相互の比例関係、技法の分析を行なう。特にデザインモチーフの有無、架構の特徴を中心に分析を行なう。 2)画像資料による意匠的実態の把握 実測調査に対応する濃尾地方における洋風意匠の年代観把握を目的として、前年度に続き古写真の悉皆的な収集を行い、すでに失われた洋風建築について同様な視点から整理・分析する。
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Research Products
(1 results)