2014 Fiscal Year Research-status Report
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25420676
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
大上 直樹 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 都市研究プラザ特別研究員 (60411732)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 裏目尺 / 社寺建築 / 規矩術 / 度量衡 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も昨年度に引き続き、研究課題を中心としたテーマで勉強会を5回(昨年度からの通算で10回)実施した。その他研究資料の収集(主に大工文書の収集)を2回(鶴岡市立図書館、盛岡県立博物館)、研究に関わる文化財建造物修復現場の現地調査を3回(三明寺2回、八勝寺)及び計量史学会の研究発表会に参加した。また査読論文を1本投稿した。研究実績の中心である勉強会の概要は以下のとおりで、毎回3時間ほどの発表と討論をおこなった。 第6回(昨年度からの通算以下同じ):5月24日(土)、於大阪市立大学、参加者10名、テーマは中尊寺金色堂の裏目による計画(大上)、元禄期の佐渡における古式を示す絵様をもつ遺構について(京都府/赤石) 第7回:7月26日(土)、於大阪市立大学、参加者11名、テーマは平等院鳳凰堂の断面計画について(大上)、寺社における主要建築と付属建築の規模の関係について(大上)、郷荘神社本殿について(近世建築史研究会/東野) 第8回:10月11日(土)、於大阪市立大学、参加者14名、テーマは太山寺本堂、大善寺本堂、金剛寺金堂その他の平面計画法について(大上)、茅負曲線の作図法について(大上)、重要文化財大神神社大直禰子神社社殿の軒規矩術法(瀧川社寺/國樹) 第9回:12月20日(土)、於大阪市立大学、参加者21名、テーマは西明寺本堂の前身小屋組の復原について(大上)、「鎌倉造営名目の木割」(竹中大工道具館/坂本) 第10回:2月14日(土)、於大阪市立大学、参加者10名、テーマは禅宗様仏堂の平面計画試案(大上)、富士吉田市小室浅間神社の造営と萱沼家文書について(京都府/田邉)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの検討によって、裏目尺が当初考えられていた使用方法だけでなく、それ以上に幅広く利用されていた可能性がでてきた。こうした知見はまったく新しい日本建築技術史の体系を切り開く可能性があると考えられる。 具体的には、歴史的建造物の平面及び立面(断面)の全体規模を規定するために裏目尺が使用されている可能性が分かってきた。建物の全体規模はこれまで考えられてきたように柱の真々で捉えるのではなく、柱の外法(木割書でいう「おぜ」)や内法寸法(同じく「だき」)を裏目尺の完数によって決定した可能性がでてきたのである。 また、建物の全体規模において外法や内法に着目すると、社寺建築における主要な建物(寺院本堂や神社本殿)規模と付属建物(門や拝殿等)の規模が相互に密接な関係にあることが判明してきた。付属建物はその総間を整数比で案分して柱間寸法、さらには1枝寸法も導き出していると考えられるのである。この仮説が正しければ、中世建築の平面決定の常識とされてきた枝割制は、実は存在せず、それとはまったく反対の設計プロセスによって建造物が計画されていた可能性が考えられるのである。裏目尺は建物全体規模の決定に重要な役割があったことが想定され、当初予想していた以上の展開が見えてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの2年間で10回の勉強会をおこなってきたが、発表と議論は研究を深めるためには有効であり、最終年度も引き続き2ケ月に1回のペースで勉強会を実施していく予定である。 なお、研究が大仏様、平面寸法の決定方法(枝割制の再考)、社寺建築における建物規模の相互の関係など重要かつ広い内容になったため、今年度はこれまで検討した内容を論文にまとめて投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
今年度は研究が予定以上に進捗し、内容が想定の外多岐に渡ったため、投稿すべき論文の内容が数本分蓄積しつつある。そのため今年度の途中からは研究の議論を深めることを重点的におこない、論文投稿のための費用を次年度に残すように予算を執行した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に予定している論文数本分の投稿料に充てる予定である。
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