2013 Fiscal Year Research-status Report
チベット系仏教及び上座部仏教の洞穴僧院に関する比較研究
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25420677
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tottori University of Environmental Studies |
Principal Investigator |
浅川 滋男 鳥取環境大学, 環境学部, 教授 (90183730)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ブータン / チベット系仏教 / 上座部仏教 / ミャンマー / 洞穴僧院 / 瞑想修行 / ラカン / 石窟寺院 |
Research Abstract |
初年度(2013)は前期に「めざせ、ブータン」という演習を組織し、学生とともにブータンの自然と文化の基礎を学び、その成果をもとに教員3名、学生10名でブータンを訪問した。調査期間は9月の10日間で、対象はゾンドラカ寺、タクツォガン寺、ダカルポ寺、チェリ寺、タンゴ寺、タクツァン僧院などパロ/ティンプー地区の山寺であり、とりわけ瞑想修行をおこなう洞穴僧院ドラフに注目した。内部の調査を許されない寺院が大半を占めるので、寺院全体の配置図測量に重心をおき、調査が許される場合、本堂ラカンやドラフの平面図・断面図を実測し、通訳を介して住職等からヒアリングした。 聞き取りによれば、チベット仏教諸派がブータンに南下してきたのは11~14世紀のことであり、この当時は本堂がなく、崖上洞穴での瞑想修行に専心していた。14世紀になってチベット僧、パジェドルガンシンポが西ブータンでラマ教赤帽子派(ドゥルク・カギュル派)の布教を進め、17世紀に諸派を排してブータンの国教になり、サブドルン・ナワン・ナムキュルがチェリ、ゴンパ、ドレイの3寺に本堂を建立した。以後、各地の僧院に本堂が築かれるようになった。この伝承を確かめるため放射性炭素年代測定の部材サンプルを20点以上採取した。予算の関係上、まだ1点しか測定していないが、その年代は18世紀を示しており、伝承との不一致はみられない。 2013年12月にはミャンマーのインレー湖周辺を1週間踏査した。おもな関心は湖畔に分布する洞窟僧院であり、マンダレーとカロで視察できた。ミャンマーの洞窟僧院は巨大なストゥーパを中心におき、周辺に夥しい寄進仏を配するもので、石窟寺院の分類に従う場合、「礼拝窟」の系統である。一方、ブータンの洞穴僧院は明らかに「僧房窟」であり、チベット系仏教の方が上座部仏教より古式を維持していると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はブータンの調査に専心し、2年度めにミャンマーの調査をおこなう予定にしていたが、敢えて方針を転換し、初年度内にブータンとミャンマーの両地で調査した。その結果、ブータンの洞穴僧院は「僧房窟(瞑想窟)」、ミャンマーの洞穴僧院は「礼拝窟」に近いものであることを知った。本研究の最終目標は、西インドで石窟寺院が発生した状態を考古学・民族学・歴史学資料により見極めることであり、ブータンの洞穴僧院が明らかにインドの初期「僧房窟」に近似しているので、今後の調査はブータンに傾斜していくことになるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
2年度(2014)は東ブータンでの調査を予定している。洞穴僧院の調査をブンタンで継続しておこなうとともに、メラク・サクティンの高山地域(標高4000m前後)でヤク遊牧民と行動をともにしながら(テント生活を送る)、仏教寺院の調査を進める。初年度までの成果については、鳥取環境大学公開講座(鳥取・米子)で報告することが決まっており、その講演記録を刊行したい。 3年度(2015)は、僧房窟だけで構成される西インドの初期石窟寺院を踏査し、ブータンの洞穴僧院と比較する。3年間の調査研究を整理し、報告書を刊行する。
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Research Products
(7 results)