2014 Fiscal Year Research-status Report
チベット系仏教及び上座部仏教の洞穴僧院に関する比較研究
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25420677
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Research Institution | Tottori University of Environmental Studies |
Principal Investigator |
浅川 滋男 鳥取環境大学, 環境学部, 教授 (90183730)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ブータン / 洞穴僧院 / ヤク遊牧民 / 鳥葬 / 瞑想 / 聖性顕現 / 民話 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年は東ブータンと中央ブータンで調査した。東ブータン高地メラ(標高3400~4000m)では、定住化したヤク放牧民の集落と放牧地を調べた。集落からヤク放牧地に至る途中、山道で何度もヤクの群れに出会った。森林で大量の薪(イトスギ)を集め、ヤクに担がせて戻る。薪の確保が住民の生活の生命線であり、どの家にも垣根や軒下に大量の薪を積み上げている。 牛飼いはメラに集住し、放牧地には山小屋が1棟建っているだけで、テントは消え失せている。かれらがテントを捨て定住を開始したのは80年ばかり前からであり、築後40年前後の住宅が多かった。住宅は木造と石造の折衷で、居間にはストーブがあり、その部屋にベッドや多くの家具を置く。隣に必ず仏間があり、複数の仏像・タンカを配するが、中心にダライ・ラマの写真を貼って祭る。メラ・サクテン地方ではゲルク派が浸透しており、ダライ・ラマを崇拝している。町外れにメラ寺があり、調査中に儀式(プージャ)をおこなっていた。50年遡れば、この村には遊牧民のテントと寺院しかなかった。 その後、タシガン経由でブンタンまで移動し、中央ブータンのシュクドラ寺、チュウドラ寺、クンザンドラ寺、ウラ寺などの僧院を調査した(標高3100~3600m)。いずれもドゥク派の僧院で、本堂ラカンは17世紀以降の建立だが、瞑想洞穴チャムカンの成立は13世紀に遡る。中央ブータンを代表するウラ村の集落はわずか50年の歴史しかなく、以前は遊牧民の放牧地であった。ただし、ウラ寺の成立は13世紀に遡る。当初の瞑想洞穴は寺院から2キロ離れた山頂崖上にあり、その崖を登り切ると鳥葬の儀場がある。 帰国後、ブータン民話の翻訳にも着手した。クンザン・チョデンの著した『炎たつ湖』は完訳、続く『ブータンの民話』を翻訳中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)ブータン高地の洞穴僧院については、西ブータン、中央ブータンですでに10ヶ所以上の調査を終えている。 2)東ブータンではヤク遊牧の高山地域における仏教の様相を調査しようとしたが、雨が連続し、また高山病に悩まされ、測量等はおこなっていない。ヒアリングの成果は十分ある。 3)ミャンマーの洞窟僧院・仏教遺産については、2013年度に調査をおこなった。また、2011年度訪問時のデータもある。 4)2014年までの調査成果は浅川研究室の吉田健人が卒業論文でまとめ、鳥取環境大学学科賞金賞を受賞した。今年度、鳥取環境大学に審査論文として投稿する予定。 5)クンザン・チョデン女史の民話(仏教説話)に関する著作の翻訳にとりかかり、1冊は完訳し、さらに1冊の翻訳を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)2015年も夏にブータンを訪問し、洞穴僧院の測量を続けるが、今回の調査はむしろ仏僧の人生・生活に係わるヒアリングに重心をおく。パロ地区で親しくなったダカルポ-ゲムジャロ寺住職のライフヒストリーの聞き書きに時間を割く予定。 2)ブータン民話(仏教説話)の第一人者クンザン・チョデン女史の面談し、民話・民俗に関する情報を収集する。 3)西インドの最初期石窟寺院も冬に訪問したいが、予算が十分ではないので、1~2の調査で浪費した場合は断念せざるをえないかもしれない。中国青海省にも質の高いチベット系僧院や瞑想洞穴が残っていると聞いているので訪問してみたいが、こちらも時間・予算との相談になる。 4)大学紀要もしくは学会の審査論文を執筆・投稿する。それと併行してクンザン・チョデン女史の民話に関する著作の翻訳も進める。
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Causes of Carryover |
3年目の経費が最も少なくなっているが、3年目にもブータンの調査は継続し、さらにインドもしくは中国青海省での調査も構想している。3年目に経費がかさむのは目にみえており、2年目の予算を残して3年目の調査旅費に充当する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
夏休みに申請者がおこなうブータン調査を補佐する学生等の旅費に充当する。
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Remarks |
天まであがれ-東ブータン高地の遊牧的世界(プロローグ)は浅川滋男、同(Ⅰ)は眞田廣幸、同(Ⅱ)は宮本正崇が執筆した。
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Research Products
(7 results)