2014 Fiscal Year Research-status Report
レーザーアシストイオン注入法によるシリコン・チタン不定比窒化物の物性と機能化
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25420687
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
粕壁 善隆 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 教授 (30194749)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須藤 彰三 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40171277)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 不定比物性 / 窒化物 / 機能性材料 / イオン注入 / その場観察 / 透過電子顕微鏡 / 電子エネルギー損失分光 / 分子軌道計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度、本申請により導入した磁気浮上型ターボ分子ポンプにより超高真空化された薄膜作成装置中で作製された膜厚100nmのTi薄膜に窒素イオン(62keVのN2+)を注入して、窒化チタン薄膜の形成過程を透過電子顕微鏡(TEM)法や電子エネルギー損失分光(EELS)法等でその場観察し、以下の知見を得た。室温で蒸着したTi薄膜にはhcp-Tiの他にTiHxがhcp-Tiが成長しており、TiHxの窒化では、水素を脱離したfcc-Ti副格子の八面体位置に侵入した窒素がTiと結合してTiNyが成長する。この窒化過程では、hcp-Tiの中で広い空隙と相対的に低い電子密度をもつ八面体位置の、注入イオンによる占有を端緒としたTi副格子のhcp-fccエピタキシャル変態が、hcp-Ti格子の局所的な原子配列を引き継ぎながら、注入原子とチタン原子の強固な共有結合の形成と注入原子の存在によるチタン原子間の結合の弱まりによって誘起された、 面内の 方向へのせん断変形によって引き起こされる。これらの実験結果を非経験的分子軌道計算法による計算結果と比較検討することにより以下の知見を得た。上記の hcp-fccエピタキシャル変態過程が原子数濃度比N/Ti~0.25以上で優先的に起こることを見出した。N/Ti~0.25以上では、窒素を含むhcp-Tiの八面体に隣接した八面体サイトに注入窒素イオンの侵入が優先的に起こり、hcp-fccエピタキシャル変態の核の成長が誘起されることが分かった。本研究により見いだされた上記の臨界値N/Ti~0.25はhcp-Tiの単位格子2個分に窒素原子1つが侵入していることを示すことを見出した。前年度の結果にさらに検討を加えた今年度の結果は、不定比窒化物を次世代のデバイス作製に応用する際の窒素原子導入の指針となると期待され、不定比窒化物の機能化に際して重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請により導入した磁気浮上型ターボ分子ポンプにより超高真空化された薄膜作成装置中で作製された膜厚100nmのTi薄膜に窒素イオン(62keVのN2+)を注入して、窒化チタン薄膜の形成過程を透過電子顕微鏡(TEM)法や電子エネルギー損失分光(EELS)法等でその場観察することにより、以下のような重要な知見を得ている。室温で成長したhcp-Tiの中で広い空隙と相対的に低い電子密度をもつ八面体位置の、注入イオンによる占有を端緒としたTi副格子のhcp-fccエピタキシャル変態が、hcp-Ti格子の局所的な原子配列を引き継ぎながら、注入原子とチタン原子の強固な共有結合の形成と注入原子の存在によるチタン原子間の結合の弱まりによって誘起された、 面内の 方向へのせん断変形によって引き起こされる。超高真空化された薄膜作成装置中で作製されたTi薄膜の制御された窒化素過程からなる実験結果を得ることで非経験的分子軌道計算(DV-Xα)法による計算結果と比較検討することができた。すなわち、hcp-fccエピタキシャル変態過程が原子数濃度比N/Ti~0.25を臨界濃度として、それ以上でhcp-fccエピタキシャル変態の核の成長が誘起されることを見出した。本研究により見いだされた上記の臨界値N/Ti~0.25はhcp-Tiの単位格子2個分に窒素原子1つが侵入していることを示すことを明らかにした。前年度の結果にさらに検討を加えた今年度の結果は、不定比窒化物を次世代のデバイス作製に応用する際の窒素原子導入の指針となると期待され、不定比窒化物の機能化に際して重要な成果であることから、本研究は、おおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究を継続すると共に、前年度に取り掛かった以下の研究をさらに推進する。レーザービームを照射した非晶質および六方晶系のSi3N4に数十eVから10keV程度のエネルギ-を持ったチタンイオンを注入し、立方晶スピネル型Si3-xTixN4-yの形成過程を反射高速電子回折法、透過電子顕微鏡法、走査トンネル顕微鏡法及び走査トンネル電子分光法等でその場観察し、注入イオン濃度の増加に伴う不定比化合物形成過程及びその結合状態の変化に伴う不定比物性を明らかにする。一方、シリコンおよびチタン基板上に反射高速電子回折法、走査トンネル顕微鏡法によりシリコンのホモエピタキシャル成長を原子レベルで制御して配向性の整ったシリコン薄膜表面を作製する。このシリコン薄膜表面にレーザービームを照射し、チタンを蒸着してチタンシリサイドを作りながら数十eVから10keV程度のエネルギーを持った窒素イオンを注入し、Si3-xTixN4-yの形成過程を反射高速電子回折法、走査トンネル顕微鏡法・電子分光法等でその場観察し、注入イオン濃度の増加に伴う化合物形成過程及びその結合状態の変化を明らかにする。これらの形成過程において、SiおよびTiがスピネル型構造の四面体位置および八面体位置をどのように占有するか等についての知見を得て、SiおよびTi原子とN原子が作る配位子場との相互作用を精査し、不定比化合物Si3-xTixN4-yのSi,Ti,Nの組成比によるバンドギャップの制御性に関する指針を得る。他方、電子エネルギー損失分光装置を装備した高分解能電子顕微鏡によるシリコン・チタン薄膜および立方晶スピネル型Si3-xTixN4-y薄膜中の双晶・転位・欠陥等の微細構造及びその電子状態に関する情報を得て、シリコン・チタン不定比窒化物の形成過程での原子レベルの形成過程の解明と不定比物性の評価を行う。
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Causes of Carryover |
薄膜作成および薄膜分析装置関係のローターポンプの不調・交換・整備を行わざるを得なかったことにより、実験回数が少し減ったため、蒸着基板、真空部品、液体窒素などのランニングコストが減ったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、これまでの装置の整備により、順調な薄膜作成および薄膜分析、特に分担者の須藤教授を中心とした電子エネルギー損失分光による分析・評価を精力的に行うことができる予定であり、相応のランニングコスト、学会発表等の経費が見込まれる。
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Research Products
(2 results)