2013 Fiscal Year Research-status Report
銅基合金中に形成されるナノ磁性粒子の特徴的組織と磁気特性の関係
Project/Area Number |
25420689
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
竹田 真帆人 横浜国立大学, 工学研究院, 准教授 (30188198)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノ磁性体 / 微視的組織 / 磁区構造 / 直接観察 / 熱磁気曲線 |
Research Abstract |
強磁性元素から成るナノ微粒子を金属母相や絶縁体母相に埋め込むとGMRやTMRの特性を示し、これらの物理現象を用いることによってハードディスクの記憶容量が飛躍的に増大した。電子技術を用いた記録の大容量化や高密度化、情報交信の高速化に伴い、それらを支える材料に対する改善や信頼性要求が更に高まっている。記録を大容量化するためには記録単位を何処まで小さくできるかに掛かっている。しかしこれを小さくすると記録保持の信頼性が落ち、また書き込み容易性と記録保持という相反する特性も有るため材料特性に対する詳細な検討と原理的理解の確立により最適策を見出して行かなければならない。ナノ磁性体に対するスピン情報の記録や保持に外部からの磁場や電場、温度等が関係するが、微粒子のスピンに対してそれらがどのような影響、効果をもたらすか、直接的に調べた研究は多くない。申請者等は、析出現象を利用することにより銅母相中にいろいろなサイズと分布状況のナノ磁性微粒子を形成させることが可能な点に着目して、組成や熱処理温度、時間を変えて組織変化を調査してきた。このような一連の研究により磁性粒子の分布や形態を制御する方法を確立した。本研究では、第一に個々の磁性微粒子に形成される磁区を光電子顕微鏡、スピン偏極STM、磁気力顕微鏡等によって直接観察することを目標に設定した。また試料総体に関わる磁気的な安定性を評価するために熱磁気天秤の手法を用いて試料のキュリー点を系統的に調べることとした。ナノ磁性粒子に関する磁区の直接イメージングは、装置の分解能との兼ね合いから、これまで多く試みられていない。分解能の限界付近では磁性粒子の磁化方向が揃っていないと磁化方向を判別することが難しい。本研究では特に単結晶を利用することで、この困難を克服することを目指した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、種々の組織を持つ試料を作製し、単結晶性試料に形成されるナノ磁性粒子のサイズや分布を変えて個々の粒子に形成されたスピン配向を直接的に画像化し、観察することに挑戦している。本研究では、何度かの試行の結果、複数の組成の合金試料について単結晶性試料作製に成功した。この試料について熱処理等を施し、粒子サイズや分布の異なる試料を得た。東大物性研谷内敏之特別研究員の協力を得てこれらの試料をレーザー励起の光電子顕微鏡(PEEM)で観察し、磁区配向に関する画像を得た。現在平均粒子サイズとして60nmと100nm程度の粒子を観察し、世界最高レベルのPEEM像を得るに至った。これによると(1)60nm程度の粒子が銅母相中に分散する試料では、析出粒子は単磁区構造を持ち、隣接する粒子間でスピンは反平行になっている、(2)100nm程度の大きさの析出粒子が形成される段階では一つの粒子が多磁区構造となり、隣接粒子は接近する部分で反平行のスピン配向を示すことが明らかになった。現在、LLG計算によって実験結果が無理なく説明されるかどうか検討を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、磁性体粒子の磁区構造を直接観察する場合、観測装置からの制約を克服しつつ最も高い解像度の観察が可能になるような試料を準備しなければならない。単結晶性試料内部では析出粒子は母相金属と結晶方位関係を保って形成され、また広範囲に方位を揃えることが可能である。単結晶性試料を利用することによって磁区構造を最も明瞭に捉えることができると考えられる。今後、PEEMやMFMの他、原理的には更に高分解能なイメージングが可能なスピン偏極STMによる画像取得を試みる予定である。このためには表面平滑性に関する更に厳しい要請が有り、2014年度以降、これらの条件を充足する試料作製方法を追求する。熱磁気天秤法によるナノ磁性体の熱磁気測定を継続中であるが、この曲線から(1)ナノ磁性体試料のキュリー点の他、(2)ナノ磁性体組織の違いにより昇温時の熱磁気曲線にも違いが見られており、ナノ磁性体間に働く磁気相互作用についても詳細な知見が得られる可能性が有る。これらの点についても更に深く調べる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、良質の単結晶性試料を作製する必要があり、製造過程における試料の良否を点検するためにX線装置のラウエカメラを申請した。研究着手の直後、これまで使用していたローレンツ顕微鏡が故障し、やや大きい修理を必要とする事態が発生した。ローレンツ顕微鏡は、微粒子磁性の調査のために、本研究でも不可欠な装置で修理が必要である。一方、単結晶製造に関しては、試料作製の条件設定が比較的順調に進んでいることとラウエカメラの代替装置としてSEM-EBSP装置が使用できることが判明した。以上の通り、当初想定されなかった事情が生起したため、科学研究費をローレンツ顕微鏡修理に使用する必要が生じた。 ローレンツ顕微鏡の修理については、現在メーカーに依頼済みである。メーカーによると、修理依頼が多く目下手が回らない状態であるが、2014年度の早い時期に修理を行う予定と回答して来ているので、6月までには復旧するものと考えられる。
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Research Products
(3 results)