2014 Fiscal Year Research-status Report
延性二相合金における重層的な強化機構と高温変形律速機構の解明
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25420693
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
藤原 雅美 日本大学, 工学部, 教授 (40156930)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 延性二相合金 / 計装化押込み試験 / クリープ特性値 / クリープ構成式 / FEシミュレーション / 国際情報交換 / 米国 |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代Mg合金として有力な97Mg-1Zn-2Y(mol%)合金押出材をモデル材料として用いる.この延性二相合金では,母相のα-Mg相(体積分率75%)中に硬質な板状のシンクロ型LPSO相(同25%)が押出方向に沿ってラメラ状に分布している.α単相,LPSO単相,二相合金のクリープ特性値(応力指数と活性化エネルギー)を測定したところ,各相の特性値は変形速度を変えても不変であったが,二相合金の値は変形速度が遅いほどLPSO相の値に近くなり,変形速度が速いときはα-Mg相の値に近づくことが明らかにされた.延性二相合金のクリープ構成式は,(a)各相の変形はべき乗則に従う,(b)荷重分担については複合則が成り立つ,(c)各相間で変形の連続性が成り立つことを前提にして導出された.理論式から,二相合金のクリープ特性値は各相の中間値をとり,変形速度だけでなく強化相の不連続性にも影響を受けることが示された.FE解析から,クリープ中は複合則が成立すること,ゆっくり変形するときは強化相の荷重分担率が高いためLPSO相の変形挙動が全体のクリープに大きく影響し,高速で変形するときは逆の理由でα-Mg相が全体のクリープ挙動を支配することなどが示された.LPSO相間に大きな隔たりがある場合は,上記(c)が成り立たなくなり,理論式から導かれるクリープ特性値とFE結果とは大きく異なる.また,LPSO相の間隔がある程度狭くなるとその間に存在する母相に生じる応力が低くなり殆ど変形しないことから,見かけ上,LPSO相が連続分布しているのと同じになる「ブリッジ効果」を生じることが示された.したがって,実験から得られた延性二相合金のクリープ特性値と理論式から予想される値がよく一致することは,二相合金中でラメラ状のLPSO相が近距離で並列して存在するため,上記のブリッジ効果が生じているためと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,理論式の導出,FEモデルの作成,実験条件の確認を行ったが,二年目となる本年度は,計画通り,二相合金と各構成単相のクリープ試験を実施した.また,FE解析により,理論式の導出で前提とした三件が変形中に成り立っているか,二相合金のクリープ特性値が変形速度によって変化する理由,それに及ぼす強化相の不連続性の影響などを検討した.ここまでは,概ね順調に進展している.ただし,研究代表者と海外協同研究者の日程上の都合により,α-Mg相とLPSO相の間で生じているはずの異相界面すべりの効果を考慮したモデル作成までには至らなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
試料をある方向に圧延することにより,二相合金中のLPSO相に又はLPSO単相にキンクバンドを導入し,それがクリープ変形を抑制する効果を有するか否かを調査する.また,FE解析では予定より遅れた部分を海外協同研究者の支援を得ながら進展させる.さらに,透過型電子顕微鏡による転位下部組織の観察なども行って活動すべり系を特定すると共に,これまでの研究成果を総括し,ミクロ/マクロのマルチスケールの視点に立ってこの種の延性二相合金における重層的な強化機構と高温変形律速機構を解明する.
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Causes of Carryover |
当初,海外協同研究者(M.Dao, MIT)から延性二相合金のクリープ挙動を再現するFEモデル作成について助言を得るため渡米する予定であったが,何回かのメールのやり取りの結果,日程調整がうまく行かなかったことと,当面は当方だけで対応できることが判明したため,海外出張を中止したことが主たる理由である.現在,FEシミュレーションはほぼ順調に進行し,所期目標の75%程度まで達成するところまで来ているが,我々の知識と汎用FEプログラム解説書からだけでは対応できないことが多々あるため,来年度は渡米してこの方面の専門家から助言を得て,研究を加速深化させる所存である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の海外出張の予算の一部に組み入れ,所期目標を達成するために有効に使用する所存である.海外協同研究者(M.Dao, MIT)とは連絡を取り合っており,彼の専門知識による助言を得て,延性二相合金のクリープ挙動を再現するFEモデルを完全な形にしたい.本研究課題で導出した延性二相合金のクリープ特性値(応力指数や活性化エネルギーなど)に関する理論式の適用限界と式中に含まれる二つの定数(αとβ)に及ぼす変形速度と強化相の分布形態の影響について検討する所存である.
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Research Products
(11 results)