2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25420698
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
田村 亮 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (20636998)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 磁気冷凍 / 断熱温度変化 / 熱吸収能力 / 反強磁性体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,磁気冷凍性能の評価方法の検討及び,磁気冷凍材料の開発を行った.具体的に得られた成果を以下に示す. (1) 断熱温度変化を最大化する方法を検討した.前年度には,あらゆる磁性体の等温過程における磁気エントロピー変化を最大にする方法を開発した.本年度は,断熱過程に着目し,強磁性体及び反強磁性体の断熱温度変化をモンテカルロシミュレーションによって検討した.これまで実験研究で使用されてきた方法を用いた場合と,前年度に提案した方法を用いた場合を比較することで,提案方法は反強磁性体において断熱温度変化を最大化することが分かった. (2) 反強磁性体の熱吸収能力を正確に評価できるtotal cooling power (TCP)を導入した.これまで熱吸収能力を評価する量としてrelative cooling power (RCP)が実験研究で用いられてきた.このRCPは,強磁性体においては一意に決まる.一方,提案方法を用いると,反強磁性体においてRCPが一意には決まらない場合があり,熱吸収能力を評価する量として不十分であることがわかった.そのため,熱吸収能力を評価する新しい量として,TCPを導入した.このTCPを用いて,従来方法と提案方法を用いた際に得られる熱吸収能力を強磁性体と反強磁性体において評価した.その結果,提案方法は熱吸収能力を最大限引き出す方法である事がわかった. (3) 高性能磁気冷凍材料の開発を目指して,Ho5Pd2の磁気冷凍性能を評価した.Ho5Pd2では,Hoイオンサイトに欠陥が多数存在しているため,Hoイオン濃度を制御できる.我々はHo5Pd2に対して,磁気冷凍性能のHoイオン濃度依存性を検討した.その結果,Hoイオン濃度に依存して磁気冷凍性能が変化し,Hoイオンをドープする事によって大きな磁気冷凍性能を引き出す事に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトにおいて開発した磁場印加方法によって,磁性体の磁気冷凍性能として重要な,等温過程における磁気エントロピー変化及び熱吸収能力,断熱過程における断熱温度変化を最大限引き出す事ができる.そのため,磁気冷凍において提案手法を用いれば,より高い冷凍効率を示す磁気冷凍機の開発が可能となる.特に,非強磁性体を用いる場合には,1桁から3桁もの大きな冷凍性能を引き出す事ができるため,磁気冷凍において使用される磁性材料選択の可能性を大きく広げる事に成功した.さらに,低温磁気冷凍材料の候補材料であるHo5Pd2の磁気冷凍性能を向上させる事に成功した.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が本プロジェクトの最終年である.1年目,2年目に培った理論物理学的知見を生かし,より広範な物質群に着目し,高性能な磁気冷凍材料の探索を理論研究によって行う.その際,これまでに提案した方法を用い,それぞれの磁性材料の持つ最大の磁気冷凍性能を引き出した上で,磁気冷凍に適した磁性材料を選定する.さらに,第一原理計算を援用し,スピン間相互作用や結晶構造の安定性を検討し,磁気冷凍に適した磁性材料の合成指針の構築を目指す.また,並行して実験グループと共同で,高性能な磁気冷凍材料の開発を行う.
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Research Products
(14 results)