2015 Fiscal Year Annual Research Report
フレームワーク構造を利用した等方性負の熱膨張物質への多様な伝導性の付与
Project/Area Number |
25420703
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山村 泰久 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (80303337)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 負の熱膨張 / イオン伝導 / フレームワーク構造 / 酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
材料の高度な熱膨張率制御を行うために重要な材料である「負の熱膨張材料」は,温度上昇と共に熱収縮をする.なかでもタングステン酸ジルコニウムは1000 Kに渡って等方的な熱収縮を示し,熱膨張制御材料の代表候補の一つとなっている.しかしながら,負の熱膨張以外の特徴的な機能をあまり有していないために,工学的な応用範囲が制限されている.本研究の目的は,このような負の熱膨張物質に電気伝導などの機能を付与した物質の開発と,その物性を明らかにすることである. フレームワーク構造を有するタングステン酸ジルコニウムに低価数の陽イオンを導入した固溶体を合成し,価数のバランスから生まれる酸素欠陥を利用した酸素イオン伝導の機能の検討を行った.合成した試料の電気物性の評価には,昨年度までに改良を終えた自作のインピーダンス測定装置を用いた.測定精度が向上したため,低価数陽イオン置換体試料だけでなく,無置換体のタングステン酸ジルコニウムやタングステン酸ハフニウムの複素インピーダンス測定まで行うことができた.測定結果から,低価数陽イオン置換にともなって,比較的高いイオン伝導が生じることを見出した.これは本研究の主たる目標の達成を意味する.陽イオン種および組成の異なる多数の固溶体のインピーダンス測定の結果から,陽イオン種依存性および組成依存性を検討し,その伝導機構を明らかにすることができた.この結果は,試料の最適化につながる成果である.さらに固溶体と無置換体の測定結果をあわせると,この結晶内部のイオンのダイナミクスと相転移現象の間に相関があることを示唆する予期しなかった結果まで得ることができた.
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