2013 Fiscal Year Research-status Report
押し込みその場観察装置の作製とガラスの新規脆さ評価法の提案
Project/Area Number |
25420713
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
吉田 智 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (20275168)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ガラス / 変形 / 破壊 / インデンテーション |
Research Abstract |
研究初年度である平成25年度は、ほぼ当初計画通り研究を進めることができた。 押し込み試験中にガラスの様々な機械的応答性を直接評価することが可能な「押し込みその場観察装置」を作製し、既報告の顕微インデンターよりも高い解像度で、ガラスの押し込み変形および破壊現象の時間変化を記録できるシステムを構築することができた。 さらに、種々のガラスで押し込みその場観察を行うことにより、ガラス組成による破壊挙動の違いを、その変形挙動の違いから考察することができた。具体的には、シリカガラスの押し込み破壊は、負荷中に起こるのに対し、ソーダ石灰ガラスの破壊は、除荷中あるいは除荷後に起こること、シリカガラスは押し込み試験中に接触領域周囲が大きく沈み込むのに対し、ソーダ石灰ガラスはその程度が小さいこと、ソーダ石灰ガラスで除荷後に観察される押し込み変形痕周囲の盛り上がり領域は、負荷中ではなく除荷過程で形成されることなどを明らかにした。また、研究初年度に得られた成果について国際会議を含むいくつかの学会で発表することができた。 これらの成果は、ガラス組成のわずかな変化が予期しない破壊挙動の変化に結び付くという工業的な問題を考察するだけでなく、非晶質脆性材料の破壊が変形に続いてどのように駆動されるかという学術的な問題に取り組むという点においても重要な実験事実となったと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「押し込みその場観察装置」の作製という点では、目的を十分に達成することができた。既存の顕微インデンターよりも高い解像度で押し込みその場観察を行うことができ、様々な新規な知見を得ることができたことがその理由である。 装置の仕様については、当初は初年度で顕微スクラッチ試験までを可能とするシステムの構築を目指したが、押し込み試験により考察すべき様々な結果が得られたため、装置の改良は次年度以降の課題とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降についても引き続き計画通りに実験を進める。特に押し込み試験中の接触領域周囲の変形を定量的に決定するとともに、圧子形状が変形および破壊挙動に及ぼす影響を評価する。さらに、顕微スクラッチ試験を観察することができるシステムへの改良にも取り組む。種々のガラスについてデータを取得し、得られた結果から広範なガラスの脆さを比較・評価するための指標を提示する。なお、平成26年度には、3年に一度開催されるガラスの破壊に関する国際ワークショップでこれまでの成果を発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
押し込みその場観察装置により得られたデータが新規なものであったため、スクラッチ用に装置を改良する前に、圧子形状依存性などを評価することが重要であると考えたためである。 また、次年度の国際会議へ出張し成果を発表することに重要性を感じたため、次年度使用額を生じさせることとした。 まずは国際会議の参加旅費とし、さらに装置改良のための費用とする。
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