2014 Fiscal Year Research-status Report
新規な室温マルチフェロイックフェライトの合成と電気磁気特性の制御
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25420714
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
菊池 丈幸 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50316048)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 機能性セラミックス材料 / マルチフェロイクス / ヘキサフェライト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,新規な室温マルチフェロイックフェライトであるSr3Co2-xZnxFe24O41 Z型フェライト, Sr4Co2-xZnxFe36O60 U型フェライトに加えて新たに室温マルチフェロイクスが報告されたSrBaCo2Fe11AlO22 Y型フェライトとその元素置換体について,それらの電気磁気(MagnetoElectric: ME)特性を正確に評価することを目的として,様々な手法を用いて高密度・高配向焼結体の作製を試みるとともに,精密な組成制御によるME特性の制御手法の確立を目指して研究を行った.本年度はZn置換による磁気特性の変化を考察するために,Z型およびU型フェライトのついて,種々のZn置換量の単相試料を合成し,それらの57Feメスバウアースペクトルを測定し,それらの詳細な解析を行った.その結果Zn置換量が50%までの組成においてはZnが4配位のダウンスピンサイトを占めること,および内部磁場がリニアに減少することが明らかとなった.またZn置換量が75%を超える組成付近で核四極子分裂に符号の変化を伴うドラスティックな変化が生じる事や,内部磁場の変化が線形から外れる傾向にあることがを明らかになった.この組成域は複素透磁率スペクトルの詳細な解析から,磁気異方性が大きく変化する組成域に対応していることから,Zn置換量が50~75%の間で面内磁気異方性から1軸磁気異方性へと転移していると考えられる.さらにZn置換量の多い組成域において,数%の常磁性シングレットが観測されたことから,粉末X線回折では検出できない第2相が生成していると考えられる.このためSEM-EDXを用いた組成分析を行った結果,高温熱処理によるZnの揮発が生じていることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画時には予定していなかったメスバウアー分光測定が可能となり,Z型およびU型フェライトのメスバウアースペクトルの詳細な解析を行った.その結果,Zn置換サイト,Feの化学状態,Zn置換に伴う磁気異方性のドラスティックな変化挙動が明らかになった一方で,Zn置換量の多い組成域において,X線回折では検出できなかった常磁性相の存在が明らかとなり,フェライト合成時におけるZnの揮発とそれに伴う組成ずれが起こっている事が明らかになった.そこで,これまでの出発組成ならびに合成条件を見直し,Zn揮発の抑制や揮発を前提とした出発組成の補正を行い,第2相が共存しない単相試料を作製しなおす作業が必要となったため,全体計画からの遅れが生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
Zn置換Z型およびU型フェライトについては,Zn置換量の多い組成域においてZnの揮発による組成ずれを抑制した合成法を確立し,真に単相とみなせる試料の合成を目指す.またY型フェライトについては,これまでに室温におけるME特性が報告されている(Ba,Sr)-Co系のみならず,Sr-Co系やそれらのCoサイトを種々の遷移金属イオンで置換した一連の固溶体の合成を試みる.得られた試料のME特性評価においては,当初に予定していた電場・磁場による配向手法に加えて,粒子形態制御と圧粉による配向を並行して検討する.また試料の電気伝導性を低下させることを目的として,高酸素圧下でのアニール処理も検討する予定にしている.
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Causes of Carryover |
研究計画時に予定していた購入備品(遊星式ボールミル)は,他研究グループ所有の装置を借り受けることが出来るようになったため購入を中止した.また,上記備品購入に予定していた予算で,電気磁気効果の測定系においてノイズをカットするためのシールドボックスの備品購入を行う予定にしていたが,測定法の改良により不要になったため,購入を見合わせた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の想定より磁性による粒子の凝集が強いため,配向焼結体を作製するためのスラリー調製にビーズミルによる解砕を試みる予定にしており,このために必要な粉砕用のジルコニア製微小球や容器等の購入を計画している.
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