2014 Fiscal Year Research-status Report
量子ビーム,熱力学測定を駆使した高機能性酸化物の特性発現機構の解明
Project/Area Number |
25420718
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
井手本 康 東京理科大学, 理工学部, 教授 (20213027)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | リチウムイオン電池 / 強誘電体 / 結晶構造 / 熱力学データ / 第一原理計算 / 電子構造 / 機能性酸化物 / 中性子 |
Outline of Annual Research Achievements |
高機能性酸化物の特性向上の指針を得るには、特性に係わる反応過程を知ることは重要である。第1に、Liイオン電池は自動車用、電力貯蔵用などの大型用電源としての用途が期待されており、エネルギー密度などの更なる性能の向上が求められている。ここで、Liイオン電池正極材料の充放電過程では、Liの脱挿入過程の構造変化が特性を支配する重要なキーになる。そこで、高容量を示す次世代正極材料候補の0.6Li(Li1/3Mn2/3)O2-0.4Li(Mn1/3Ni1/3Co1/3)O2固溶体の電極特性、充電過程における熱力学的安定性や平均・局所結晶構造を検討した。その結果、充電および放電に伴う各金属元素のサイト移動過程が明らかとなり、遷移金属配列が変化することで熱力学的安定性、構造安定性が変化していることを見出した。 さらに、固溶体材料を共沈法で合成し、中性子、放射光X線を用いた結晶・電子構造及び局所構造とサイクルに伴う局所構造の変化を検討した結果、局所構造のLiとOが大きく変化し、平均構造では表現できない局所構造の違いに由来する、中性子・放射光X線全散乱を相補的に用いたPDF解析による局所構造の検討により裏付けている。さらに、充放電が進んだ時の局所構造の変化を明らかにし、PDF解析およびEXAFSから妥当なものである。これらが充放電効率と放電電圧の低下に関与していることを明らかにした。第2に、非鉛系強誘電・圧電材料としてBi0.5K0.5TiO3-BiFeO3-K(Nb, Ta)O3を合成し、強誘電特性と結晶・電子構造の関係について検討した。結晶構造解析から、KNbO3, KTaO3固溶によって格子・八面体歪みが緩和することで強誘電特性が向上していること、SPSで作製した試料は通常焼結に比べて焼結性、強誘電特性が改善され、八面体の結合角分散が増加することを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リチウムイオン電池用正極材料, FeRAM用,圧電アクチュエーター用の強誘電体酸化物を対象にして、種々の複合酸化物の合成、キャラクタリゼーション、中性子、放射光を用いた結晶構造(局所、平均構造)解析、欠陥および諸特性について、特性の発現過程(リチウムイオン電池用正極材料では充放電サイクル過程、強誘電体では温度依存)について測定、解析し、得られた熱力学データと比較することで、総合的にこれらの関連を検討し、高性能化の指針を得ることを目的に検討している。 リチウムイオン電池正極材料については、複数の物質について初期およびサイクルを重ねた充放電過程における中性子、放射光X線を用いた結晶構造[平均・局所構造]解析を行い、電池特性を支配している因子を明らかにできた。 強誘電体についても新たな非鉛系の様々な組成の試料について、中性子、放射光を用いた結晶構造[平均構造]と強誘電特性の関係を明らかにできた。 継続中の課題として、レートを変えた試料の平均・局所、電子構造の変化、これらの検討を加味した構造モデルによる量子化学計算結果と実験結果を比較してその妥当性を検討し、電気化学特性との関係について検討中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究において、ブレークスルーは電気化学的にLi組成を変化させた充電時の正極材料における構造解析である。問題は試料量であり、放射光は問題ないが、中性子回折では測定時間がかかることである。大強度のJ-PARCができ、測定、解析を工夫することで実際の電極自体を用いて、コインセルサイズの量(8mg; 従来の中性子回折測定で行われていた量の1/100)で3-6時間測定を行い、ex-situにおける平均構造の解析に世界で初めて成功し、大きな注目を集めている。昨年度はJ-PARCがトラブルで停止していた期間も長引いたが動き出したので、中性子全散乱測定を用いたpdf解析による局所構造の解析について取り組んでいく。また、放射光X線でも同様の実験を行い、相補的に解析を行うことで詳細に検討し、電池特性との関係を明らかにする。さらに、充放電のレートを変えた場合についても検討を行う。 また、中性子、放射光X線の結晶構造解析の検討を加味した構造モデルによる量子化学計算結果と実験結果を比較してその妥当性を検討し、結晶および電子構造、熱力学量のシミュレーションも含めて高性能な特性を得るための物質の構造制御にも取り組んでいく。 さらに、リチウムイオン電池正極材料、強誘電体酸化物の材料自体の幅も広げた検討も行っていく。
|
Causes of Carryover |
消耗品で若干端数が出たため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は消耗品費に充当する。
|
Research Products
(45 results)