2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25420723
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
磯部 雅朗 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点・強相関物質グループ, グループリーダー (10354309)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新井 正男 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点・材料特性理論グループ, 主席研究員 (40222723)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 熱電材料 / 遷移金属化合物 / 強相関電子系 / 磁性 / 計算物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、遷移金属化合物を対象として、その強い電子相関に由来する異常に高い熱起電力の起源を調べ、より高性能の新しい熱電材料を設計するための指針を得ることにある。具体的には、課題申請者が最近合成に成功したコバルト酸化物系一次元金属物質(Ca,Na)Co2O4 を取り上げ、電子構造の観点から、その異常熱起電力の原因を探る。良質試料を用いた輸送特性測定、第一原理バンド計算による電子構造の検討を行い、異常熱起電力の起源を明らかにする。
高い熱電性能は、高いゼーベック係数と高い電気伝導率によってもたらされるが、本来、両者は相反する物理量であるため、両立は容易ではない。この問題を打開するには、物質の電子構造に立ち返って熱電特性の発現機構を深く理解すると共に、電子構造の観点から物質設計を行うことが必要である。 コバルト酸化物は、優れた熱電性能を示すことが知られている。その高い熱電性能の起源として、①スピン・軌道縮重残留エントロピー輸送効果や、②プリン型バンド効果などの理論が提唱されている。代表物質としては、従来から、NaxCoO2などの層状物質が多々取り上げられてきたが、研究対象を他の様々な物質に拡げることも重要である。原理検証や現象解明(物性研究)は多様な物質で行われてこそ、発現機構の一般化が可能となる。近年、研究代表者らは新物質CaCo2O4を合成発見し、そのNa置換体(Ca,Na)Co2O4が一次元金属として高い熱電性能を示すことを見いだした。本課題においては、(Ca,Na)Co2O4試料の良質化を行い、それを用いて詳細な物性を調べることで、本系の異常熱起電力の起源解明を図る。 H27年度は、(Ca,Na)Co2O4の多結晶試料による輸送特性精密測定と解析を行った。また、関連物質の物性評価も並行して進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度作製した(Ca,Na)Co2O4の良質多結晶試料を用いて輸送特性測定などを行った。また、電子構造計算なども進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き熱電特性の評価を高い精度で行い、信頼性あるデータを確立する。さらに、電子構造の観点から、この系の高い熱電特性の原因を探る。また、論文や学会発表を行う。
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Causes of Carryover |
H27年度は、実験の原料や部材の購入、学会発表の旅費や論文校閲などに予算を利用した。事業は概ね順調に進んでいるが、より精密に達成するための再実験や学会発表・論文投稿を翌年度に延長して実施することとしたため、その費用を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
追加実験の原料・部材・実験器具などの購入や機器の整備、及び、研究発表のための費用に充当する予定。
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Research Products
(7 results)