2015 Fiscal Year Research-status Report
高強度鋼アーク溶接金属の極低酸素化による機械的諸特性の飛躍的向上
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25420731
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| Research Institution | Ehime University |
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Principal Investigator |
小原 昌弘 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (10374000)
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| Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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| Keywords | ｱｰｸ溶接金属の清浄化 / 極低酸素溶接金属 / ｱｰｸ溶接の安定化 / ﾐｸﾛ組織の微細化 / 溶接部の高靭化 / 高強度鋼板の溶接 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
高強度鋼の溶接金属の高清浄度化・高靭性化技術の確立を目指して、①低酸素雰囲気中でのｱｰｸ溶接の安定化技術の探索、②極低酸素溶接金属でのﾐｸﾛ組織の微細化技術を継続検討した。
①ｱｰｸ溶接の安定化の目途が立ったことから、今年度は、低酸素ｱｰｸ溶接部の溶込み形状の改善に取り組んだ。低酸素ｱｰｸ溶接の溶け込み形状は溶接部中央が凸状に深く、周辺が浅い溶込み形状になる傾向が強く、多層溶接時には溶込みの浅い部分で前層を溶かしきれない融合不良欠陥の発生が懸念され、実用上問題となる。ｱｰｸ溶接現象の高速度ﾋﾞﾃﾞｵ観察から、溶接部の溶込み形状は溶接ﾜｲﾔが溶けて溶融池に移行する溶滴移行形態に依存し、小液滴となって高速度で溶接中央部に連続的に突入する場合に中央部が凸状の溶込み形状となることが判った。そこで、溶接電源出力をﾊﾟﾙｽ化し、溶接ﾜｲﾔ先端の液滴の離脱力を制御することによって溶込み形状を制御することを試み、酸素を多く含む溶接部と同様な鍋底形状の溶接部を得ることが可能となった。
②これまでに極低酸素ｱｰｸ溶接金属において強脱酸元素であるｱﾙﾐ含有量を減少させ適切な組成の介在物を形成することで、粒内変態を活性化し、ﾐｸﾛ組織を微細化することが可能であることを示した。しかし、溶接材料の成分制約から研究対象であるGMA溶接ではなく、得られた知見は比較的溶接入熱の小さいTIG溶接での結果に限られていた。今年度は市販の溶接ﾜｲﾔ成分を調査し、ｱﾙﾐ含有量の少ない溶接ﾜｲﾔを見出し、それを用いて溶接入熱の大きなGMA溶接でのﾐｸﾛ組織の微細化技術を検討した。GMA溶接としては大入熱の溶接電流450Aまで溶接を行なった結果、この入熱範囲であれば介在物の形成状況には大きな差は見られず、TIG溶接で得られたと同様な粒内変態主体の組織が得られることが明らかとなった。
以上のように開発技術の実用化に向けて非常に重要な知見が得られた。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、①溶接金属の高靭化のための高清浄化を可能とする極低酸素雰囲気中でのｱｰｸ溶接の安定化技術の確立、②極低酸素含有量のｱｰｸ溶接金属でのﾐｸﾛ組織微細化技術の確立である。
①の課題については、Ar(ｱﾙｺﾞﾝ）ｼｰﾙﾄﾞｶﾞｽ中への酸化性ｶﾞｽ（CO2)の微量添加＋電源出力のﾊﾟﾙｽ化技術、Arｼｰﾙﾄﾞｶﾞｽ中への酸化性ｶﾞｽの局所ﾊﾟﾙｽ添加技術、純Arｶﾞｽ中での極低電圧短絡溶接条件＋電源出力変調 などの開発技術により、低酸素ｼｰﾙﾄﾞｶﾞｽ雰囲気中特有のｱｰｸ溶接の不安定現象の発生を抑制することで、安定なｱｰｸ溶接を可能とし、鋼板と同等ﾚﾍﾞﾙの極低酸素含有量の高清浄な溶接金属を得る見通しを得た。また、開発技術の実用化段階で課題となる低酸素溶接特有の中央部が凸状に深い溶込み形状についても、電源出力変調により溶滴の離脱力を制御することで改善できる見通しを得た。
②の課題については、鋼板の酸素含有ﾚﾍﾞﾙと同程度の低酸素含有量の溶接金属においても形成される介在物組成を適正化すれば、粒内変態が活発に起こり、粒内変態主体の細かいミクロ組織を形成することが可能であることを示した。昨年度までは、溶接入熱の比較的少ないTIG溶接において得られた結果であったが、実用上多く用いられるより溶接入熱が大きく高能率なGMA溶接においても、同様な結果が得られることを示した。
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| Strategy for Future Research Activity |
平成27年度が最終年度であったが、更に研究の内容を充実させるために研究期間を延長した。主たる研究内容としては、極低酸素含有量の溶接金属における粒内変態に好ましい介在物形成条件の明確化（酸素含有量に対するｱﾙﾐ量の許容値（Al/O)、MnS形成に対するS含有量（Mn/S)など）。酸素含有量の高い従来の溶接金属では、これまでにも（Al/O）での整理も行われた研究はあるが、本研究のような極低酸素ﾚﾍﾞﾙでの研究成果は未だない。後続の研究のためにも、基本データをしっかり採取し、整理しておきたい。
また、本研究で得られた成果を広く関連分野に知らしめるべく、研究論文としてまとめて学会に投稿していく予定である。
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| Causes of Carryover |
研究内容の充実化のために研究期間を延長した。そのため、研究内容の論文投稿が次年度に延びた
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として研究成果の論文投稿費用として使用を予定している。
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