2014 Fiscal Year Research-status Report
低次元ナノ構造セラミックス薄膜/金属複合体の創製と応用技術の開発
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25420732
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
矢田 光徳 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20274772)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 薄膜 / リン酸チタン / 酸化チタン / 濡れ性 / Liイオン電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.前年度までに合成に成功していた5種類のリン酸チタンナノ構造体薄膜/金属チタン複合体の中の3種類の複合体(ナノシート薄膜、ナノロッド薄膜、ナノプレート薄膜)について、酸化チタン薄膜への変換に関する実験を進めた。ナノロッド及びナノプレート薄膜については、これらの形態をよく反映した酸化チタンナノ・マイクロ階層構造体薄膜への変換に成功した。得られた酸化チタン薄膜への有機分子の表面修飾によりいずれも超撥水性を示したが、水滴の付着性は薄膜の形態により大きく異なり、特に、ナノロッド薄膜を前駆体とした薄膜は滑落角4度という特異的に水に対して濡れにくい性質を示した。さらに、メッシュ及びチューブといった実際の応用において重要となるであろう形状のチタンの表面上にも、一次元形態のリン酸チタンナノ粒子からなる薄膜の合成に成功し、有機分子の修飾によりメッシュについては滑落角7度の超撥水性を付与することに成功した。 2.種々の結晶構造及び形態を有するリン酸チタン粒子を前駆体としてアナターゼ相及びブロンズ相の酸化チタンナノ・マイクロ階層構造粒子を合成する方法を確立した。また、光触媒特性及びLiイオン電池負極材料特性についての評価を進め、それぞれにおいて優れた特性を示す酸化チタンの合成条件をある程度絞ることができた。 3.前年度まで研究においてリン酸チタンナノ粒子の合成に成功していたが、合成時に多量のガスが発生するために安全上の問題があり、合成には細心の注意が必要であった。本年度の研究において市販のPTA溶液(ペルオキソチタン酸水溶液)とリン酸水溶液を混合して、所定の温度と時間で反応させることにより、簡単かつ安全にリン酸チタンナノ粒子が生成することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度の初めに定めた研究の推進方策にしたがって、セラミックス/金属複合体及び複合体を構成する粒子に関する合成と物性評価を進めてきた。2014年度は論文発表はできなかったが、学会発表は順調に3件行うことができた。リン酸チタンナノ構造体薄膜/金属チタン複合体とリン酸チタン粒子及び酸化チタンナノ・マイクロ階層構造体薄膜/金属チタン複合体と酸化チタンナノ・マイクロ階層構造粒子については、合成条件と生成物の構造及び形態の関係は整理できつつあり、生成物の濡れ性、光触媒特性、Liイオン電池特性、イオン交換特性等の物性評価も比較的順調に進み、物性と構造・形態の関係も解明が進みつつある。2014年度は本研究室の修士学生数が例年になく少なくなってしまったため、本研究に従事する学生数が少なくなり、当初予定していた酸化チタン/金属チタン複合体の電池特性の評価や遷移金属酸化物/金属複合体の創製についての研究をうまく進めることができなかったが、2015年度は学生数も増えることが確定したため挽回したい。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の予定に沿って研究を行う予定である。得られた生成物のより詳細な構造・形態観察を進めて合成条件との関係を整理していくととともに、特に、2014年度までの研究において得られたリン酸チタンナノ構造体薄膜/金属チタン複合体とリン酸チタン粒子及びそれらを前駆体として生成した酸化チタンナノ・マイクロ階層構造体薄膜/金属チタン複合体と酸化チタンナノ・マイクロ階層構造粒子についての物性評価を中心に研究を進めていきたい。具体的には、これまでに得られている結晶構造及び形態が異なる多数の酸化チタンナノ・マイクロ階層構造体薄膜/金属チタン複合体と酸化チタンナノ・マイクロ階層構造粒子については、Liイオン電池負極材料特性についてユニークな特性が明らかになりつつあるため、充放電におけるサイクル特性やレート特性等の詳細な解析を進めていきたい。また、本研究で得られた多数の薄膜については濡れ性の測定を進め、ナノ・マイクロ構造と濡れ性の関係について2014年度までの成果と合わせてまとめたい。さらに、遷移金属酸化物/金属複合体の創製については合成を中心とした研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
2014年度の執行済額は380231円であり、2万数千円分の合成装置の修理が予定よりも遅れて2014年度から2015年度の年度をまたいで行われて執行予定であるため、実質的には2014年度は当初予定の40万円程度の執行である。初年度の未使用額が71614円あり、これが未使用額の大半を占めている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度の研究に必要な実験器具や試薬等の物品費に使用するとともに、2015年度が最終年度であり論文の投稿準備を進めているため、発表論文の英文校正などに使用したいと考えている。
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