2013 Fiscal Year Research-status Report
生体吸収性Mg合金のための耐局部腐食性アパタイト-生分解性高分子複合被膜の開発
Project/Area Number |
25420742
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
廣本 祥子 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA研究者 (00343880)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マグネシウム / 生分解性高分子 / リン酸カルシウム / 複合被膜 / 腐食防食 / 密着性 / 耐き裂性 / 生体材料 |
Research Abstract |
水酸アパタイト(HAp)被覆マグネシウム(Mg)合金に生分解性高分子のポリ乳酸(PLLA)もしくはポリカプロラクトン(PCL)をディップコーティングした。電子顕微鏡(SEM)観察より、PLLA層はHAp層表面をほぼ均質に覆っていたのに対し、PCL層は不均質でPCLが塗布されていない領域が島状にできていた。HAp-PLLAおよびHAp-PCL被覆Mg合金を生理食塩水中へ6日間浸漬した。浸漬後、いずれの表面でも孔食がみられ、高分子層の一部に剥離がみられた。また、HAp-PLLA被覆Mg合金を数週間大気中に放置していたところ、PLLA層にひび割れ・剥離が起こった。PLLAおよびPCLは疎水性のため、親水性のHAp表面への良好な密着性が得られなかったと考えられる。 そこで、PLLAもしくはPCLをMg合金に被覆した後、HAp被覆処理を行った。HApはPLLAやPCL層の厚い箇所を避けるように析出しており、HApとこれらの高分子の親和性が低いことが分かった。 Mg合金表面にある親水性の生分解性高分子(HPpolym)を被覆し、その後にHApの被覆処理を行ったところ、均質なHAp層を得た。そこで、HPpolym-HAp被覆Mg合金薄板のU字曲げにより最大1.4%歪みを加え、SEM観察を行った。1.4%歪み付与後の被膜にき裂や剥離は観察されず、HPpolym-HAp被膜はMg合金に良好な密着性を示すことが明らかになった。また、NaCl溶液をU字の内側に滴下し、被膜のき裂を起点とするであろう局部腐食の発生を観察した。HPpolymの有無で局部腐食の発生に顕著な差はみられなかった。HPpolym層の耐局部腐食性が不十分であったと考えられる。HAp層の下側に作製する高分子層の組成や厚さなどを改善することで、材料に歪みを付与しても局部腐食発生を抑制する被膜を作製できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生分解性高分子として生体材料に広く用いられているポリ乳酸(PLLA)およびポリカプロラクトン(PCL)を用いたが、リン酸カルシウム被膜との付着性が不良で、基材Mg合金への密着性が良好な複合被膜を得られなかった。また、基材Mg合金表面にPLLAもしくはPCLを被覆した上にリン酸カルシウム被覆を試みたが、均一な被膜を得ることができなかった。このため、これら以外の生分解性高分子を探索する必要が生じたため、研究計画通りに研究を進展させることができなかった。 また、予備的なU字曲げ試験より、U字の凸側のき裂発生の検出が困難であることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
リン酸カルシウム被膜表面には当初候補にしていた生分解性高分子を密着性高く被覆することができなかった。そこで、異なる種類の生分解性高分子をMg合金に被覆した後にリン酸カルシウムを被覆する方法に切り替え検討を行い、有望な高分子を見付けることができた。今後は、新しい生分解性高分子のMg合金への被覆条件を検討することで、密着性・耐き裂発生に優れた複合被膜の開発を進める。 基材の変形に伴う被膜のき裂発生の検出には、U字曲げ試験だけでなく引っ張り試験も行うこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「11. 現在までの達成度」に記載したように、当初候補にした生分解性高分子ではリン酸カルシウムとの付着性や親和性が不良であることがわかったため、今年度はリン酸カルシウムとの親和性が良好な高分子の探索を行った。そして、基材Mg合金の購入や曲げ試験の治具購入を行わなかったため、次年度使用額が生じた。 また、U字曲げ試験だけでは基材Mg合金の変形に伴うき裂発生の評価が困難であったため、引っ張り試験を行う必要が生じた。 H26年度には、U字曲げ試験だけでなく引っ張り試験を行うため、引っ張り試験機を購入する。当初の計画では備品の購入計画はなかったが、上記の理由によりH25年度の次年度使用額とH26年度の交付金を合わせて引っ張り試験機の購入に当てる。
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