2014 Fiscal Year Research-status Report
ガンマ線照射下おける貴金属の酸化物形成に関する研究
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25420744
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
山本 春也 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (70354941)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
箱田 照幸 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (70354933)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ガンマ線 / 白金 / パラジウム / 金 / 酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、種々の雰囲気でガンマ線照射した貴金属薄膜の深さ方向の組成をラザフォード後方散乱法等により調べ、ガンマ線照射により誘発される貴金属(Pd、Ptなど)の酸化物形成過程の解明を進めている。これまでに厚さ約100 nmのPd薄膜をガンマ線照射(照射量:2.5 MGy)すると、表面から約10 nm の領域で酸化物の形成が起こり、照射量の増加とともに膜全体に酸化が進行することを確認した。さらに、Pt, Au薄膜では、照射量:5.5 MGyまで照射を行っても、金属光沢を保ち膜表面には有意な酸化物層の形成は起こらず、貴金属の種類によりガンマ線照射により誘発される酸化物形成に違いがあることを見出した。本年度は、ガンマ線照射により酸化物の形成が起こるPd薄膜を対象に、ガンマ線照射下の試料温度の影響について調べた。実験ではガンマ線照射中の試料温度が制御できる照射容器の製作を行い、スパッタリング法によりサファイア(0001)基板及び石英基板上に形成したPd(111)単結晶膜及び多結晶Pd薄膜試料に対してガンマ線照射を実施した。室温で2.5 MGyまで照射したPd薄膜試料では、薄膜表面の金属光沢が褐色に変化した。しかし、試料温度:120℃に保持して照射量:3.8 MGyまでガンマ線照射したPd薄膜試料では、金属光沢が保たれていた。これらのPd試料表面の組成をX線光電子分光法及びラザフォード後方散乱法により調べた結果、ガンマ線照射したPd膜表面には、窒素が検出されるようになり、さらに試料温度:120℃で照射したPd薄膜では、室温で照射した試料よりも窒素量が増加し、また、形成される酸化層が薄くなる傾向を示した。以上の結果から、ガンマ線照射中の試料温度の違いによりPd薄膜表面に形成される酸化物に違いが生じることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガンマ線照射容器の作製とともに試料温度を制御したガンマ線照射を実施し、Pd薄膜の試料温度を120℃に保持することにより酸化物の形成が抑制できること、さらにPd膜表面に窒素の存在が確認できたことから、ガンマ線照射下で生じる酸化物形成には硝酸が関与するなど酸化物形成過程の解明に進展が図れた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の実験結果にもとづき、貴金属薄膜作製及びガンマ線照射実験を継続し、ガンマ線照射下における貴金属の酸化物形成過程を考察するとともに、放射線環境下で使用する各種センサーなどに触媒として用いられる貴金属層の作製に関する知見を得る。
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Causes of Carryover |
本年度に作製したガンマ線照射容器では、高線量のガンマ線照射により試料加熱ヒーター、配線類及びガスシール材などが著しく劣化するため、各部品を交換する必要が生じた。このため、平成26年度の直接経費の使用計画を見直しを行い、平成27年度に交換部品を購入するための費用を確保したことにより、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、ガンマ線照射容器で用いる交換部品の購入に使用する。 平成27年度交付分の経費は、当初の予定通り、使用する。
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Research Products
(3 results)