2014 Fiscal Year Research-status Report
金属との相互作用を活用したグラファイト状窒化炭素の特性制御
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25420746
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
佐野 泰三 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理研究部門, 主任研究員 (30357165)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 窒化炭素 / 光触媒 / 有機金属半導体 / 層状化合物 / 機能性材料 / メチルメルカプタン / 高せん断混合 / グラフェン |
Outline of Annual Research Achievements |
グラファイト状窒化炭素(g-C3N4)に濃硫酸を添加して得られるg-C3N4の誘導体溶液に金属塩を加えると、金属塩ごとに異なる構造の有機結晶が得られることを平成25年度に見出した。この手法を発展させるため、誘導体溶液から濃硫酸を分離する手法を検討したが、非プロトン性溶媒では分離できず、プロトン性溶媒では金属イオンも分離され、金属イオンがg-C3N4に残らなかった。また、硫酸処理により光触媒活性は半減した。活性に寄与するシアノ基で置換されたメレムやメラミンユニットが硫酸処理により減少したためであった。このため、強酸などで表面が改質されることのない金属複合化手法の開発を進めることにした。 グラフェンの合成法としてグラファイトを高せん断混合する方法が報告されており、g-C3N4への適用を試みた。グラファイトに用いられる界面活性剤と溶媒の組み合わせではg-C3N4に変化がなかった。グラフェンと異なり、g-C3N4を形成するポリマーにはアミノ基やピリジン様の窒素が含まれ、イオン性の物質との相互作用が強いと予想し、各種の金属塩水溶液を加えて高せん断混合した。酢酸銀または酢酸鉄水溶液を用いると、g-C3N4のX線回折ピークが1/5に減少し、積層方向の周期性が低下したことを示すとともに、吸収端が長波長シフトした。酢酸銅と酢酸マンガンを用いた場合には変化が小さく、金属イオン種に依存すると示唆された。 酢酸銀水溶液中で高せん断混合したg-C3N4は、メチルメルカプタンの吸着及び光触媒酸化反応に高い活性を示した。加えた銀イオンのモル数の44%に相当するメチルメルカプタンを吸着し、5ppmの流通式反応器で93%の除去率を示した。同量の銀を光電着法で担持したg-C3N4の吸着量は5%に過ぎず、除去率は67%だった。重量比で35%に相当する銀を添加したにもかかわらず、高せん断法では1nm以下の銀粒子(またはクラスター、イオン)として高分散されていると推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
g-C3N4に金属を複合化する手法として高せん断混合法を検討し、硫黄性化合物に対して特異的に高い吸着能を有し、光触媒的な酸化活性も高い銀添加g-C3N4の合成に成功した。g-C3N4の積層方向の周期性の低下と、光吸収の長波長シフトが確認された。表面への銀粒子の担持ではなく、より強い相互作用を有する銀の複合化に成功したと考えられる。これらの結果から、研究の目的に向かって大きく進展したと言える。 一方、得られた金属複合化g-C3N4について、複合化された金属(特に銀)のキャラクタリゼーションが十分に進んでおらず、吸着や光触媒反応のメカニズムにも不明な点が多い。XPSにより銀がg-C3N4と複合化されていることは確認されたが、透過型電子顕微鏡では銀粒子の溶解により撮影に成功していない。 また、論文にするだけのまとまったデータがようやく揃い始めた段階で、論文投稿が和文1報のみとやや遅れている。平成27年度に巻き返しを図りたい。
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Strategy for Future Research Activity |
g-C3N4に金属を複合化する手法として高せん断混合法をさらに検討する。添加するアニオン種・カチオン種、せん断速度や温度等が、得られるg-C3N4の積層方向の周期性等、金属の複合化構造に与える影響を調べる。また、蛍光スペクトル及び励起スペクトルを測定し、金属種がバンド構造に与える影響を解析する。金属種に配位した窒素原子や炭素原子の電子状態は光電子分光法を用いて解析する。金属の状態については、化学吸着、電子顕微鏡、EXAFS、電気化学セルなどを用いて分析する。また、硫黄化合物に対する吸着特性及び光触媒活性を、従来の光電着法で得られる金属複合化g-C3N4と比較しつつ解析する。 これらにより複合化のメカニズムを明らかにするとともに、新たな応用を模索する。
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Causes of Carryover |
初年度に研究補助員の雇用が遅れ、予定より人件費がかからなかったことと、学会発表を行えなかったために旅費がかからなかったことにより次年度使用額が生じ、その6割程度をH26に使用したが完全に使い切らなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定より研究補助員の作業時間を増やすための人件費に次年度使用額の半分を充当する。また、H26年度に行えなかった外注分析費に充当して研究を加速する。これらによって外部発表回数を当初予定より増やし、その旅費及び学会費に充当する。
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