2014 Fiscal Year Research-status Report
ステンレス溶射皮膜におけるS相の耐腐食性の改善と硬化機構の解明
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25420747
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Research Institution | Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
足立 振一郎 地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (50359410)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 順弘 地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (90359365)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | コールドスプレー / 表面処理 / 低温プラズマ窒化 / 低温プラズマ浸炭 / 耐摩耗 / 耐腐食 |
Outline of Annual Research Achievements |
コールドスプレーによるSUS316L溶射皮膜の緻密化について検討した.SUS316L溶射皮膜はオーステナイト系ステンレスが加工硬化しやすい材料であるため,窒素ガスを溶射ガスとした場合は気孔や亀裂など欠陥の少ない緻密な皮膜を形成することが難しかった.そこで,溶射材料の粒径および溶射距離を最適化することで,これまでより欠陥の少ない緻密な皮膜を成膜することができた. しかし,電気化学測定において,基材である炭素鋼の腐食に起因する腐食電位および電流密度が計測されたことから,SUS316L皮膜中のマイクロクラックを介して基材が腐食されることが判明した.一方,溶射後にレーザで再溶融処理をしたSUS316L溶射皮膜は,貫通気孔などがほとんど無くバリア効果が高いため,防食効果に優れることが認められた. 処理温度450 ℃で低温プラズマ窒化処理および浸炭処理したところ,拡張オーステナイトS相が形成して耐摩耗性の改善が認められた.窒化処理によるS相をナノインデンターにより硬さの分布を2次元方向で測定した.表面から内部に向かうに従って硬さは減少したが,これはGDSによる窒素固溶量の深さ方向分布とほぼ一致しており,窒素固溶量の減少によることが伺える.また,深さ位置が同じであれば,硬さは場所による差異がわずかであった.さらに,EBSDによる結晶方位解析などにより,S相には強い歪みが存在していることが認められた.これらのことから,S相は窒素固溶による結晶歪みが硬化に関係していると推察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノインデンターによる硬さ分布およびEBSDによる結晶方位解析などから,S相の硬化機構が明らかになりつつある.また,基材防食効果に関しても,レーザとの複合化処理により良好な結果が得られるなど,当初の計画どおり順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,低温プラズマ浸炭処理および窒化処理との複合化処理を検討するとともに,S相の硬化機構についてミクロレベルの評価を行い検討する.また,コールドスプレーSUS316L溶射皮膜の溶射条件の最適化をさらに進める.これらにより,基材防食性と耐摩耗性に優れたコーティング皮膜の開発を行う.
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Causes of Carryover |
年度末の3月に実施計画をしていた実験が延期となったため,次年度に使用することにした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の実験で使用する消耗品等に充当する予定である.
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Research Products
(3 results)